2026年10月31日、土曜日と重なったハロウィン当日、池袋の街はコスプレ姿の人であふれました。

同じ日の渋谷では、ハチ公像が囲いで隠され、駅前の一部では車の通行が止められていたそうです。

夜になると、ネットには「池袋が渋ハロ化している」「池袋の治安がやばい」という声が次々と流れてきました。

渋谷の人の多さに引き返して、池袋へ戻ってきたという人もいたようです。

ハロウィンといえば渋谷、というイメージがあった人ほど、「なんで池袋なの?」と首をかしげたかもしれません。

実は池袋のハロウィンには、渋谷にはない主催者がいて、その中には豊島区も名を連ねています。

そして今年は、イベントが終わったあとの夜の池袋にも、コスプレ姿の人がたくさん残っていたという声が相次ぎました。

なぜ池袋なのか、そして夜の池袋にいたコスプレの人たちは何だったのかを、わかりやすく解説していきます。


池袋のハロウィンには主催者がいる

まずは、いちばん素朴な疑問から見ていきましょう。

たしかに、秋葉原も新宿も人の多い街ですよね。

それでも池袋の名前が挙がるのは、ここに「池袋ハロウィンコスプレフェス」、通称「池ハロ」という、決まった日に決まった場所で開かれるイベントがあるからです。

始まったのは2014年で、主催は豊島区と、ドワンゴやアニメイト、サンシャインシティなどの企業でつくる実行委員会。

渋谷のハロウィンは誰かが開いている催しというより、人が自然に集まってできたものなので、そもそもの成り立ちがまるで違います。

では、なぜ区がコスプレのイベントに加わったのか。

2014年、豊島区は民間の有識者会議「日本創成会議」から、東京23区で唯一、将来の人口が保てなくなるおそれがある「消滅可能性都市」に挙げられていました。

池ハロは、その指摘を受けた年の秋に動き出したと、実行委員会がまとめた資料に書かれています。

アニメイトの本店や乙女ロードがあり、昭和のマンガ家たちが若いころを過ごした「トキワ荘」があったのも豊島区なので、マンガやアニメとの縁はもともと深い土地でした。

ただ、最初から歓迎されていたわけではないようです。

同じ資料によると、コスプレという見慣れない文化には地域の抵抗感があり、1年目は限られた範囲でしか開けなかったのだとか。

そこから無理に広げず、地元との話し合いを重ねて会場を少しずつ増やし、2023年には14万1千人、去年は3日間で16万1千人が集まるイベントになりました。

今年も大通りでは、およそ400人のコスプレイヤーによるパレードが行われたと報じられています。

池袋は渋谷の代わりに選ばれた街ではなく、12年かけて、地元から「ここでやっていい」を少しずつもらってきた場所なんです。


5年ぶりに10月31日と重なった池ハロ

「でも、去年まではここまで言われていなかったのでは?」と感じた人もいるかもしれません。

池ハロはふだん、ハロウィン前の週末に開かれていて、去年は10月24日から26日まででした。

今年の会期は10月30日から11月1日までの3日間で、公式の発表によると、ハロウィン当日の31日が会期に入るのは5年ぶりです。

しかも31日は土曜日で、渋谷はその日に向けて「GOODBYE BAD HALLOWEEN」を掲げ、囲いや交通規制で人だかりを作らせない構えを取っていました。

渋谷区は2023年に「ハロウィーン目的で渋谷に来ないで」と呼びかけ、2024年10月からは駅周辺の路上飲酒を、毎日18時から翌朝5時まで禁止しています。

つまり、渋谷が「来ないで」と言い始めてから、池ハロがハロウィン当日に開かれたのは今年がはじめてのこと。

当日に仮装して出かけたい人にとって、渋谷は年々「行きにくい街」になっていたわけです。

今年の渋谷でどこまでの対策が取られていたのかは、こちらにまとめています。

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その渋谷から電車で10分ほどの池袋で、ハロウィン当日に大きなコスプレイベントが開かれていたのが今年でした。

池ハロ初日の30日の夜の時点で、参加した人からはこんな声が出ています。

池ハロでコスプレをして参加するには、有料の「コスプレ登録」が必要で、受付で渡される参加証を見えるところに付けておく決まり。

観るだけ、記念に写真を撮るだけなら登録は要りませんが、仮装して街を歩くつもりで来た人の中には、この仕組み自体を知らなかった人もいたのでしょう。


決まりどおりなら帰り道は私服

ネットでとくに多かったのが、「帰り道にコスプレの人がたくさんいた」という声でした。

ここで池ハロの参加ルールを開いてみると、少し意外な一文が出てきます。

禁止されていることのひとつとして、「コスプレをしたままの来場および退場」が挙げられているんです。

着替えは会場の更衣室でするもので、家やホテルで着替えてくるのも、一部の宿泊プランを除いて禁止されています。

ほかにも、素顔の分からないお面のまま移動しない、模造刀や銃の小道具は袋やカバンにしまう、路上でお酒を飲まない、といった細かい決まりがずらり。

私服で来て、会場で着替えて、また私服に戻ってから帰る、というのが池ハロの前提。

夜の部の「池ハロナイト」は18歳以上向けに30日だけ開かれたもので、31日のプログラムは18時までです。

決まりどおりなら、日が暮れてから駅へ向かう池ハロの参加者は、もう普段着に戻っているはずなんですよね。

つまり、夜の帰り道で見かけたコスプレの人たちの多くは、池ハロの決まりの外にいた人たちだった可能性が高いんです。

もちろん全員がそうとは言い切れず、着替えずに帰ってしまった参加者もいたかもしれません。

ただ、イベントが終わるころに池袋へやって来るコスプレ姿の人は、以前からいたようで、池ハロに通う人からはこんな話も出ています。

この投稿によれば、終わってから来た人たちは、何もないと分かると渋谷へ移っていったそうです。

夜の行き先として、これまでは渋谷が残っていたということ。

ところが今年は、その渋谷が「来ないで」と言い、囲いを組んで待っていました。

夜の行き先がひとつ減ったぶん、足がそのまま池袋に残った、というのが今年の31日だったのかもしれません。


「治安いい」と「やばい」が並んだ土曜日

同じ31日の池袋について、ネットにはまったく逆の感想が並んでいます。

3回目という人の目には、渋谷より落ち着いた街に映っていたようですね。

ほぼ同じ時間には、こんな声も上がっていました。

どちらの声も、見たままを書いているはず。

池ハロのエリアの中にはスタッフがいて、撮影していい場所も、使っていい機材も決まっていて、参加証を付けた人どうしが同じ決まりを分け合っています。

実行委員会の資料には、警察から「イベント終了後にゴミがない」と感謝されたという話まで載っていました。

ところが、エリアを一歩出た道や駅は、池ハロのルールを一度も読んだことがない人も通る、ふつうの街です。

見ていた場所がエリアの中か外か、時間が18時の前か後かで、同じ池袋がまるで違う顔に見えていた、というのが実際のところでしょう。

「渋ハロ化」と言いたくなった光景の多くは、池ハロそのものではなく、18時を過ぎた池ハロの外側、主催者がいない時間と場所で起きていたように見えます。


怖いのは池ハロが続けられなくなること

それでも、池ハロに参加している人にとって夜の池袋の様子が気がかりなのには、もうひとつ理由がありまして。

池ハロの参加ルールには、決まりが守られなければ、この先も続けていくことが難しくなる、という趣旨の注意書きが入っているんです。

地域の抵抗感を12年かけて少しずつほどいてきたイベントだからこその注意書き。

渋谷のハロウィンには主催者がいないので、騒ぎが起きても、取りやめにできる催しがそもそもありません。

だから渋谷区は、街そのものに向かって「来ないで」と言うしかなかったのだと思います。

池袋の場合は主催者がいるので、エリアの外で起きた騒ぎでも、ネットやニュースでは「池袋のハロウィン」として池ハロと一緒にくくられてしまいがちです。

前の晩から、参加者のあいだではこんな声も出ていました。

強い言葉ですが、ここで向けられているのは人ではなく「ルールを守らないこと」のほうです。

渋谷から人が流れてくること自体は、誰にも止められません。

ただ、決まりの外にある夜の池袋の騒がしさまで池ハロの来年に数えられてしまうのだとしたら、それはさすがにおかしいと言いたくなります。

池袋のハロウィンが渋谷と違っていたのは、私服で来て私服で帰る決まりを12年守ってきたところにある、ということですね。