2026年10月30日の朝6時、渋谷駅前のハチ公像のまわりに、柵とシートの囲いが組まれました。

今年はハロウィン当日の31日が6年ぶりに土曜日にあたり、警視庁は30日の夕方から3日間、数百人規模の警察官を出して警戒にあたると報じられています。

駅のまわりでは夕方から車が止められ、夜は酒の販売の自粛が呼びかけられ、電動キックボード「LUUP」のポートも一部が使えなくなりました。

1枚目の「ハロウィーンを渋谷の誇りに」から、4枚目の「ハチ公像周辺は封鎖となります」まで、看板の言葉は7年でここまで変わっています。

ここまでやって、本当に効果はあるのか。

そして毎年かかっている税金は、少しは減っているのか。

数字で確かめられるところまで確かめて、今夜どこを見れば答えが出るのかまで、順番に見ていきます。


規制が始まって初めての土曜日

前に10月31日が土曜日だったのは2020年で、コロナ禍のまっただ中でした。

このとき渋谷区の長谷部健区長は「今年のハロウィーンは渋谷に来ないで」と呼びかけ、区公認の「バーチャル渋谷」でオンラインのハロウィンが開かれています。

渋谷区が条例でハロウィンの路上飲酒を禁じたのは2019年なので、人がふつうに集まれる年にハロウィン当日が土曜日と重なるのは、規制が始まってから実は初めてなんです。

ただし、ハチ公の囲いそのものは2023年から続いていて、今年で4年目。

つまり今夜は、毎年の対策が「翌日が休みの夜」にどこまで通用するかを、初めて試される夜でもあります。

今年、渋谷で取られている主な対策を並べてみましょう。

  • ハチ公像の囲い:10月30日6時から11月1日の朝まで(予定)
  • 警察官の動員:30日夕方から3日間・数百人規模
  • 車の通行止め:30日16時から駅周辺の一部道路
  • 酒の販売自粛:31日18時から翌朝5時まで・駅周辺の店に要請
  • LUUPなどのポート:一部が利用停止
  • ポイ捨て:その場で過料2,000円

ポイ捨ての過料は今年6月に始まったばかりで、ハロウィンの夜に取られるのは今年が初めてです。

前の夜の時点で、駅前の景色はもうこうなっていました。

柵とコーンと警察の車が並ぶ歩道を見たら、「しちゃだめなの?」と戸惑う気持ちも分かります。

ただ、ハロウィンそのものが禁止されたわけではなく、区が止めたいのは路上での飲酒やごみ、通りをふさぐ人だかりのような「迷惑なハロウィン」。

今年の標語も「GOODBYE BAD HALLOWEEN」です。


「渋谷の誇りに」はどこへ消えた

このニュースには、「数年前はハロウィンに渋谷に来て!とか言ってたくせに渋谷区が無責任すぎる。」という返信も付いていました。

時間の順に並べてみます。

2018年のハロウィンでは、センター街で軽トラックがひっくり返される騒ぎが起きました。

翌2019年、渋谷区観光協会が出した啓発キャンペーンの言葉が「SHIBUYA PRIDE SHIBUYA HALLOWEEN(ハロウィーンを渋谷の誇りに)」で、区はこの年に条例で路上飲酒を禁じ、およそ1億円をかけてポスターや警備を用意したと報じられています。

呼びかけの中身は「来るならマナーを守って」なので、「来て」とは書いていなくても、人が集まること自体は前提にしていたことになるわけで。

「来てと言っていた」と受け取った人がいても、不思議ではありません。

そこから2023年に「渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません」、2025年に「禁止だよ!迷惑ハロウィーン」と、看板の言い方はどんどんまっすぐになっていきました。

路上飲酒の禁止も、2024年10月からはハロウィンの時期に限らず、毎日18時から翌朝5時までに広がっています。

金曜の夜の様子を、渋谷区議のひとりは日付が変わってすぐにこう書いていました。

区議会の中からも、始まりは区の側にあったという声が出ているんです。

そのうえで、迎える側だった区が、7年かけて止める側へ回り、その費用を毎年払い続けてきました。


囲いが取り上げた待ち合わせ場所

では、ハチ公を封鎖すると何が変わるのでしょうか。

囲われたハチ公には、こんなツッコミも入っていました。

待ち合わせに来た人も、11月1日の朝まではハチ公に会えません。

渋谷区の発表を開くと、囲いの目的として書かれているのは「人の密集による混雑・混乱の回避」。

ハチ公前は渋谷でいちばん有名な待ち合わせ場所で、目印があると、人はそこで足を止めて写真を撮ったり、誰かを待ったり、そのまま立ち話を始めたりします。

囲いが取り上げているのは、渋谷へ来る道ではなく、そこで立ち止まる理由のほうなんです。

酒の販売自粛も、同じ向きの対策として読めます。

店で買った酒を路上で飲みはじめれば、人はそこから動かなくなるからです。

立ち止まる人が増えると、後ろから来る人の流れが詰まります。

2022年10月29日、韓国ソウルの梨泰院では、ハロウィンで集まった人の波が細い坂道で身動きを取れなくなり、159人が亡くなりました。

止まる人がいて、そこへ後ろから人が押し寄せ、誰も前にも後ろにも動けなくなる。

ハチ公の囲いは、その事故を見たあとの渋谷が「待ち合わせ場所」から手を付けた対策だと、私は受け止めています。


人だかりは半分以下になっていた

肝心の「効果」は、数字に出ているのか。

手がかりになるのが、民間の人流データです。

会場探しのサイトを運営するシアターワークショップが、Location AIのデータで、スクランブル交差点のまわり半径50メートルを調べています。

比べたのは2019年(木曜日)と2025年(金曜日)の、どちらも10月31日です。

  • 来た人:約20.9万人 → 約15.7万人(25.1%減)
  • 5分以上とどまった人:約4.0万人 → 約1.7万人(57.4%減)

来た人は4分の3に減っただけなのに、とどまった人は半分以下にまで減っています。

しかし、分析した側も、この数字は対策の効果を示すものではないと断っていますし、2025年の31日は夜にかけて本降りの雨でした。

雨の夜は、対策がなくても人は長居しません。

区も毎年、センター街周辺の「ピーク時の滞留人数」を出していて、2024年は約2万人、2025年は約4,500人だったと伝えられています。

数える場所も方法も違うので上の数字とは並べられませんが、区の物差しもまた「何人来たか」ではなく「何人が留まったか」なんです。

雨の分を差し引いても、来た人よりとどまった人のほうが大きく減っているという向きは、囲いや販売自粛のねらいと同じ方向を向いています。

夕方の駅前で撮られたテレビの画面にも、そのくらいの空気が映っていました。

仮装した観光客が、インタビューに笑って答えているくらいの渋谷。

では、お金はどうか。

区は今年、駅周辺の安全対策に5,800万円、広告などに1,400万円、ごみ対策に200万円を計上していると報じられています。

合わせると7,400万円で、ここに警察の警備の費用は入っていません。

2019年のおよそ1億円と比べると、中身の分け方は違うものの、額としては少し下がってきているようです。

それでも、騒ぐのはほんの一部の人なのに、その後始末に毎年数千万円の税金が使われ続けている。

「それはおかしい」と言いたくなるのは、やっぱりここですよね。


答えが出るのは今夜の終電のあと

では、金曜の夜はどうだったのか。

先ほどの区議は「思ったよりも混乱は少なさそうでした」と書いていましたが、30日の夜遅くには、こんな写真も回っています。

同じ夜でも、見た場所と時間によって、印象はずいぶん変わるもの。

どちらか片方だけで「成功」「失敗」と決めてしまうと、肝心の「人が流れていたか、詰まっていたか」を見落としてしまう。

そして迎えた31日の夜、渋谷駅のまわりは仮装した人でごった返したと報じられています。

スクランブル交差点のあたりでは、DJポリスを含む多くの警察官が、写真を撮る人たちに立ち止まらないよう誘導していたそうです。

交差点で繰り返されていたのは「来ないで」ではなく、「止まらないで」という呼びかけでした。

区の巡回員も普段より多い約40人が出て、ポイ捨ての過料を集めていたとのこと。

この記事を更新した31日の23時ごろの時点では、逮捕やけが人が出たという報道は見当たりません。

ただ、山場はまだこれから。

次の日が休みなら、終電を逃しても困らない人が出てきます。

日付が変わっても人の波が引かないかどうか、今年の対策が試されるのはそこでしょう。

あとから出てくる数字で、見ておきたいのは次の3つ。

  • 区が出すセンター街周辺のピーク時の滞留人数(2024年は約2万人・2025年は約4,500人)
  • 逮捕された人の数と、けが人が出たかどうか
  • 人がどこへ流れたか

流れた先の候補のひとつが池袋で、同じ3日間、「池袋ハロウィンコスプレフェス」が5年ぶりにハロウィン当日を含む日程で開かれています。

去年は3日間で16.1万人が集まったそうで、ネットにも「ほっといて。池袋で楽しみましょう」と、渋谷にこだわらない声がありました。

その池袋の夜も「渋ハロ化している」と言われはじめていて、渋谷とどこが決定的に違うのかは、こちらでくわしく見ています。

池袋駅前のレッドカーペットでポーズを取るコスプレ姿の4人と、カメラを構える人たちの水彩画
池袋ハロウィンが渋ハロ化してる?渋谷にはない決定的な差とは2026年10月31日、土曜日と重なったハロウィン当日、池袋の街はコスプレ姿の人であふれました。 同じ日の渋谷では、ハチ公像が囲いで隠さ...

土曜の夜を越えて、センター街の人だかりがどこまで小さく収まったのか。

毎年の7,400万円に見合う夜だったかどうか、答え合わせは今夜の数字からということになりそうですね。