2026年11月3日、アンドマリー(andmary)の11月の新作が発売された日の午後、白いショッパーが歩道の柵ぎわにずらりと並んだ写真がネットに上がりました。

袋の口からはビニールに包まれた新品の服がのぞいていて、まわりに持ち主らしい人の姿は見当たりません。

投稿した人は「アンドマリー大量に道端に放置されてた」と書き、「お洋服たちが可哀想すぎる」「こんなことするなら買うなよ」とも添えていて、写真はその日のうちに大きく広がりました。

アンドマリーは、リボンやフリルの甘い服で人気のブランドで、新作の発売日を指折り数えて待っている人がたくさんいます。

そして同じ日、来店予約を取ろうとしても、夜8時からのオンラインストアに張りついても、1着も買えなかった人が大勢いました。

それなのに、なんで新品の服が、袋ごと道に置かれていたのか。

手元にある事実から、考えられる理由をひとつずつ当ててみます。


道端に並んだアンドマリーの10袋

楽しみにしていた服が、袋ごと道に置かれている写真は、見ていてつらいものがありますよね。

写真に写っているのは、横断歩道のすぐそばの歩道で、車道との境にある柵に沿って、白い大きなショッパーが前と後ろの2列に並べられています。

数えると、10袋近く。

投稿は11月3日の午後3時すぎで、その1時間20分ほどあとには、別の人も角度を変えて同じ柵ぎわの袋を写した写真を投稿し、首をかしげていました。

アンドマリーの常設のお店は、新宿のルミネエスト地下1階にある1軒だけです。

公式の案内によると、この日は混雑が見込まれたため、朝10時半から夜9時まで、ネットで来店予約をした人しか入れない日になっていました。

写真の投稿に場所は書かれておらず、袋が誰のものだったのかも、いまのところ分かっていません。

 

捨てた?置いただけ?まず考えにくい2つ

写真を見た人の多くが、まず口にしたのは「なんで?」でした。

考えられる理由は、大きく分けて4つあります。

捨てていった、ちょっと下ろしただけ、持ちきれずに迎えを待っていた、転売や代行の受け渡しを待っていた。

まずは最初に浮かぶ2つから当ててみると、どちらにも引っかかるところが出てきます。

捨てていった?

「こんなことするなら買うなよ」と言いたくなる気持ちは、とてもよく分かるんですよね。

ただ、袋の中身の値段を知ると、「捨てていった」と考えるには、ちょっと無理がある。

公式アカウントが前の日に紹介していた11月3日発売の新作は、デニムが1万5,400円、セットアップが1万9,800円、ムートンのジャケットが2万5,300円(いずれも税込)。

1袋に1着ずつだったとしても、あの柵ぎわには10万円を軽く超える服が並んでいたことになります。

しかもこのブランドの服は、手放すとしても定価より高く売れてしまう服です。

10月はじめには、定価1万9,800円のアンドマリーの服が、フリマアプリで3万円台で売れていたという投稿もありました。

11月3日の夜にも、新作が「2倍近くの値段で転売されてて」という声が上がっています。

名前だけで値段がつくので、フリマアプリには正規品を名乗る偽物まで出てきているようです。

偽物まで出回るほどの服を、新品のまま袋ごと道に捨てていく理由は、ちょっと思いつきません。

 

ちょっと下ろしただけ?

電話や信号待ちのあいだに、重い袋を少し下ろしただけ、という見方もできそうです。

ところが、最初の写真から1時間20分ほどたっても、同じ柵ぎわに袋は並んだままでした。

新品の服を10袋近く、人通りのある歩道にそれだけ置いておくのは、「ちょっと」と呼べる長さではありませんよね。

捨てたにしては値が張りすぎ、ひと休みにしては長すぎる。


持ちきれずに迎えを待っていた?

3つ目に考えられるのは、袋が多すぎて持って帰れず、迎えの車やタクシーを待っていた、という線です。

実際、公式の来店予約のページには、お店の中での決まりがこう書かれていました。

  • 同じ商品は1人1点まで(色やサイズが違えば買える)
  • お会計を分けるのは1人3回まで
  • お渡し用のショッパーは1人最大10枚まで
  • 店にいられるのは30分

ただ、買ったあとの帰り道について書かれているのは、配送サービスのところだけです。

新作の発売日に受け付けるのは、ルミネカードを持っている人の無料配送だけで、送れるのは大きいショッパー3個まで。

有料の配送と着払いは、混雑を避けるために受け付けていません。

 

つまり、上限いっぱいの10袋を受け取った人は、カードがあっても7袋、カードがなければ10袋を、自分の手で抱えて店を出ることになります。

店の中は、予約を取って入れた人でさえレジの列を見てあきらめるほどの混みようだったとのこと。

お店の決まりは袋の枚数まで数えていても、その袋を持ってどう帰るかは、買った人に任されているんです。

両手に抱えきれない袋を歩道に下ろして、車が来るのを待つ人が出てもおかしくない決まりではあります。

ただ、迎えを待つだけなら、袋のそばを離れずにいるのがふつうでしょう。

1時間を超えて、持ち主の姿が見えないまま置かれていたことまでは、この線だけでは説明しきれません。

 

転売や代行の受け渡し待ち?

写真への返信には「入店予約にマイナンバーを義務付けた方がいい」という声もあり、転売や代行で買った袋ではないかと見る人もいました。

たしかに、さっきの決まりにあった「ショッパーは1人最大10枚まで」と、写真の10袋近くは、ちょうど重なります。

上限いっぱいまで買った1人の袋なのか、何人分かを1か所に集めて、誰かに引き渡すのを待っていたのか。

手放しても定価より高く売れる服なので、そう疑われてしまうのも無理はありません。

ただ、これも写真から確かめられることではなく、あくまで考えられる可能性のひとつです。

 

それでも、この見方が真っ先に出てくるのには、わけがあります。

新宿まで行けない人にとって、この日の頼みの綱は夜8時に始まるオンラインストアでした。

ところが8時を回っても、ページを更新すると発売前の表示のままで、気づけば売り切れに変わっていたという人がいます。

支払いのボタンまで進んだのに待ちの画面に戻された、という書き込みも次々に上がりました。

夜8時を少し過ぎたころには、こんな声も。

東京から遠い人は、オンラインで負けたら定価で買える道がほとんど残っていません。

そこで頼られるのが、来店の枠を持っている人に代わりに買ってもらい、定価に手数料をのせて払う「代行」です。

 

ただ、代行はお店の外でのやりとりなので、お金だけ払って服が届かない、という話がついて回ります。

10月に大阪で期間限定のお店(ポップアップ)が開かれた時期には、遠くから大阪まで出てきた人がこんな投稿をしていました。

交通費をかけて大阪まで出てきて、服は1着も手に入らず、6万円ほどがなくなったということ。

11月3日にも、本来なら2万円前後の服を「4,990円」で売ると持ちかけ、その値札がついた店内の写真まで送ってくる相手とのやりとりを公開した投稿が、広く回っていました。

この夜も画面の前で買えなかった人からすれば、道に並んだ10袋は、なおさら目に刺さる光景です。


整理券の最後に書かれた一文

代わりに買う人をどう止めるかは、お店のほうも前から気にかけてきました。

発売日は来店予約の人だけ、その翌日などは整理券を配ってその番号順、という形で、公式サイトのお知らせ欄には7月からほぼ毎月、整理券の案内が並んでいます。

11月2日に出た11月4日分の案内では、整理券はLINEで受け取るランダムの番号で、1人1枚まで。

スマホを何台持っていても1枚しか出ず、代わりの人が取ることや、端末を貸し借りして入ることも断ると書かれています。

 

そのうえ決まりは、店の前の通路にまで及んでいました。

  • 案内が始まる9時20分より前に来ても並べない
  • お客さんどうしで先に列を作らない
  • 駅の通路をふさいだり、駅のほうへ列を作ったりしない
  • 走る・押し合うなどがあれば、整理券を配らない

並び方にまで細かく決まりを設けて、お店はなんとか混乱を抑えようとしているように見えます。

それでも整理券はなかなか取れないようで、取れた人からもこんな声が出ていました。

しかも案内のいちばん最後には、こんな一文があります。

「整理券は『ご入店順のご案内』を目的としたものです。商品のご購入をお約束するものではありません。」

朝から並んで番号をもらっても、ほしい服が残っているとは限らないわけです。

決まりは駅の通路にまで及んでいても、あの袋が置かれていた歩道までは届いていません。

 

「可哀想」だったのは服だけか

4つの理由を当ててみても、どれだったのかは、今も分からないまま。

捨てたにしては高すぎて、ひと休みにしては長すぎ、迎え待ちにしても持ち主の姿がなく、転売だとしても確かめようがない。

 

袋を置いていった誰かにも腹が立つし、買えない売り方にもため息が出る。

ただ、袋の持ち主にも、写真には写らない事情があったのかもしれません。

お店も、予約や整理券の決まりを重ねて、できることを探してきました。

どちらか一方だけが悪い、と言い切れる話ではなさそうです。

 

けれど、どの理由だったとしても、そこに見えてこない人がいます。

この日、やっと手にした1着を、その日のうちに着て写真に撮った人たちです。

予約を取って、身分証を持って、30分のなかで選んで、ようやく「念願の」1着になる。

あの写真に「なんで?」と胸がざわついたのは、服が地面にあったからというより、誰かがここまでしてやっと1着を手にする服が、袋ごとまとめて道に置かれていたからなんです。

「お洋服たちが可哀想」という一言には、あの袋の中の1着がほしくて、この夜買えなかった人たちの気持ちまで入っていたのかもしれませんね。