2026年11月4日、週刊文春と週刊新潮が、GMOインターネットグループの熊谷正寿社長(63)の私生活を、同じ日にそろって報じました。

文春が出したのは、サイバー攻撃の被害を公表したその日の夜に、タキシード姿でシャンパンの会に出ていた写真です。

新潮は、横須賀にあるGMOの迎賓館へ飛んでくるヘリの音に、近所の人が悩まされてきたという話でした。

11月2日の会見で涙ながらに謝っていた姿を見たあとだけに、やっぱりそういう人だったのか、と思ってしまった人も多いはずです。

シャンパンの会、迎賓館のパーティー、会社のお金で動くジェットや船、そして消されないままの笑顔の自撮り。

被害が公表されてからの2週間ほどのあいだに次々と表に出てきた話を並べると、どれも被害に遭った人の側から見て引っかかるものばかりです。

何が報じられていて、どこまでが確かめられるのか、熊谷社長の悪評を4つにまとめていきたいと思います。


悪評1 被害公表の夜のシャンパン式典

いちばん引っかかるのは、やっぱりここですよね。

GMOが「お名前.com デスクトップクラウド」へのサイバー攻撃に気づいたのは10月20日で、不正アクセスを公表したのは翌21日の早朝だったそうです。

週刊文春によると、熊谷社長はその21日の夜、東京・元赤坂の明治記念館で開かれたシャンパンの会に出ていました。

有名ホテルのシェフらによる特別コースが出され、グラスには高級シャンパーニュが次々と注がれていたとのこと。

文春が手に入れた写真には、シャンパンゴールドのタキシードを着て、女性2人に挟まれながら、人差し指を立てる「GMOポーズ」をとる熊谷社長が写っているそうです。

 

記事の中では、GMOの関係者がこう話しています。

「その最中にも、被害者はハッカー側に個人情報や資産が抜き取られていく恐怖を味わっていたはずです」

しかもこの会は、たまたま誘われた食事会でもありませんでした。

文春の電子版によると、あの夜に開かれていたのは、シャンパーニュの普及を目的にした「シャンパーニュ騎士団」の日本支部の叙任式で、年に1回のガラ・ディナーを兼ねた式典だったそうです。

そして熊谷社長は、2016年にこの騎士団の最高位「シャンベラン」に叙任されたと、自分のブログとXで報告していました。

被害を公表したその夜に、自分が最高位を持つ団体の晴れの式典に出ていた、ということになるわけです。

 

文春の取材に対して、GMOは広報を通じて、被害の拡大を防ぐことと客への対応を最優先にしてきたと答えています。

そのうえで、こう付け加えました。

「熊谷個人の私的な行動に関する個別のご質問につきましては、回答を差し控えさせていただきます」

なぜ公表したその日に式典へ出たのかについて、会社としては一言も説明していないということです。


悪評2 横須賀の迎賓館とヘリの音

新潮の記事は、近所に住む人の声から始まっています。

舞台は神奈川県横須賀市の佐島で、相模湾に面した海沿いに、GMOが持つ迎賓館「GMOマリーナ&スパ佐島」が建っているそうです。

地上3階建てで、窓の外には屋外プールと海、隣には船をつなげる桟橋まであるとのこと。

 

近くに住む人は、ヘリのことをこう話しています。

「熊谷さんのヘリは2~3年前までは本当に頻繁にやって来ていました。在宅で働く私の妻がそれですっかりノイローゼ気味になってしまって……」

夏休みの時期には週に何度も飛んできて、ヘリポートではしばらくプロペラを回し続け、重油のようなにおいもしたと続けています。

別の住民は、月に1回ほど週末の昼間に、施設からクラブミュージックのような重低音や生演奏の音が響いてくると話し、「のどかな場所なんだから、もう勘弁してほしい」とこぼしていました。

 

では、その迎賓館の中では何が行われていたのか。

新潮にはGMOの関係者の話として、来客は著名な企業家やモデルで、熊谷社長のクルーザーが東京湾から相模湾へ回って桟橋に着ける、という話が載っていました。

なじみの高級すし店や中華料理店の料理人が出張してきて、1本100万円は下らないロマネ・コンティや最高級のシャンパンが出され、興が乗ると熊谷社長がDJをすることもあるといいます。

 

新潮によると、ヘリ「SKY KUMARKII」とプライベートジェット「SKY KUMARKIII」は熊谷社長が持つもので、クルーザー「SEA KUMARKII」「SEA KUMARKIII」はGMOの名義だそうです。

本人の公式プロフィールにも、55歳でヘリの自家用操縦士の免許を取ったことや、趣味のDJについて「ストレス解消に今でも大音響でDJプレイをすることが。」という一文が載っていました。

佐島の迎賓館は、本人も2022年7月のXで写真つきで紹介していた場所。

グループの慰労会に使ったという投稿で、自分は空から「低空飛行&ホバリングでお出迎え」したと書いています。

新潮で住民が話していた「超低空でうちの屋根をかすめていく」と、どうしても重なって見えてしまう一文です。

ヘリを運航する仕事をしている人のこの投稿は、騒音が心と体に響くこと自体は否定できないとしつつ、「ノイローゼ気味」は住民の言葉で因果関係まで確かめられたわけではないこと、音の大きさや回数のような数字が記事に出ていないことを挙げています。

その数字はたしかに記事にありませんが、在宅で働く家族が参ってしまうほどの音が、夏休みには週に何度も来ていたというのが、住民の話です。


悪評3 ジェットとワインに流れた会社のお金

私生活の話だけなら、お金持ちの趣味で終わるかもしれません。

ところが文春は、もう一歩踏み込んできました。

見出しに並んだのは、「会社のカネでジェット&船舶に17億円、ワインに4億円」という数字。

 

お金の話のほかにも、会社と社長の距離を疑わせる話が、ほかに2つ。

同じ記事では、GMOが社員に向けて、萩生田光一氏や小泉進次郎氏ら自民党の議員への投票を呼びかけるメッセージを出していたことも報じるとしています。

熊谷社長がSNSに、女性社員が浴衣姿で働く写真をのせていたことも、文春の記事に入っているそうです。

どれも細かい中身は有料の電子版と11月5日発売の雑誌のほうにあり、いまの時点で無料で読める範囲には、内訳までは書かれていません。

 

ただ、会社と熊谷社長のあいだのお金の流れの一部は、もともと誰でも読める書類に載っていました。

GMOインターネットグループが2026年3月に出した有価証券報告書の「関連当事者」の欄です。

そこには、熊谷社長が議決権の過半数を持つ「株式会社熊谷正寿事務所」との取引として、「航空機及び船舶の利用」が2025年の1年間で3億5800万円と書かれています。

2024年の1年間は1億4600万円で、この2024年には「経営幹部」との「酒類販売」として1900万円の取引も載っていました。

熊谷正寿事務所は熊谷社長の資産を管理する会社で、GMOのいちばん大きな株主でもあるとされています。

ざっくり言えば、航空機や船を使うたびに、社長の個人会社へ会社のお金が払われているという関係です。

書類に載っているのは1年ごとの金額なので、文春の17億円や4億円がどの年をどう足した数字なのかは、ここからは分かりません。

書類の注には、利用料は「他社のサービス内容及び価格を勘案し取引条件を設定しており、社内の適切なプロセスにより決定した金額の範囲内で運用しております」と添えられていて、手続きを踏んで開示されてきた取引ではあります。

株主代表訴訟という言葉まで出ていますが、この投稿は、週刊誌の話は事実確認と切り分けるべきだと添えたうえで、専門家の警告を受けても経営の判断が変わらなかったことのほうを重く見ていました。

それでも、使うたびに上場企業のお金が社長の個人会社へ流れていく形を見て、公私の区別がついているのかと首をかしげたくなるのは、自然な感覚ですよね。


悪評4 消されない自撮りと号泣会見

週刊誌の2本が出る前から、熊谷社長の発信そのものにも厳しい声が集まっていました。

10月27日、不正アクセスについて国際刑事警察機構(インターポール)に相談したと報告するXの投稿に、熊谷社長は自分の笑顔の写真を添えていたそうです。

翌28日にも、東京大学での講義について聞かれて「いや、お約束通りきちんと講義してきましたよ」と返し、自撮りの写真をのせたと報じられています。

被害者がハッカーに個人情報をさらされるかもしれないと怯えていた時期に、この笑顔だったわけです。

写真を見た人からは、人質のような状態に置かれた被害者の気持ちが分からないのか、という声が上がりました。

29日には本人が「ご指摘はもっともであり」と謝りましたが、写真は「脅迫に屈しない姿勢を示す意図から」当面そのまま残すと添えています。

謝るなら消してほしい、と思った人にとっては、謝罪がかえって引っかかりを増やす形になってしまいました。

 

そして11月2日、不正アクセスが公表されてから12日後に、ようやく初めての会見が開かれます。

熊谷社長は途中で涙ぐみ、「同じ回答を二度すると、皆様の命の砂時計を無駄にする」のように、「命の砂時計」という言葉を何度も口にしたことが話題になりました。

炎上対応を仕事にしている新田龍氏は、部下の身だしなみを報道陣の前で叱った場面などを挙げて、何もかも自分のほうを向いた会見だった、と書いています。

涙が本物だったかどうかは、外にいる人間には決めようがありません。

ただ、その会見のわずか2日後に、被害公表の夜のシャンパンの写真が出てきたことで、ネットでは、やっぱり嘘泣きだったのか、という声まで出ています。

会見で何があったのかは、こちらにまとめました。

記者会見でマイクを持って話すGMOインターネットグループの熊谷正寿代表を描いた水彩画
GMO熊谷社長の号泣会見まとめ…「パワポ出して」はパワハラなのか大事な場で、上司に頼まれたスライドがなかなか画面に出てこない。 会社で働いたことのある人なら、背中に冷たい汗が流れる場面ですよね。 20...


私的な行動で片づく夜なのか

そして、どうしても引っかかるのが、GMOの「私的な行動」という答え方です。

熊谷社長は、2016年に騎士団のシャンベランに選ばれたときのブログで、こう書いていました。

「取柄の無い僕にとって、シャンパンとワインは会話のきっかけでもあり、その意味で仕事の潤滑油です」

 

本人の言葉では、シャンパンは仕事の道具。

そのうえで、パーティーが開かれ、グループの慰労会にも使われる迎賓館はGMOが持っていて、航空機や船を使えば社長の個人会社へ会社のお金が払われています。

仕事と暮らしの境目を曖昧にしてきたのは、ほかでもない熊谷社長自身なんです。

それなのに、被害を公表した夜の過ごし方を聞かれた場面でだけ、その夜は急に「私的な行動」の側に入れられています。

FPの中嶋よしふみ氏は、関連当事者取引の金額が話題になった10月27日のこの投稿で、理屈は通っていても公私混同にしか見えない、と書いていました。

会見で自分の考えを長々と語った姿と、ジェットやワインの取引を、同じ公私混同の一続きとして見ている人もいます。

仕事の場面ではシャンパンもジェットも会社と地続きで、責任を問われる場面になると私生活の扉が閉まる。

被害に遭った人が知りたいのは、自分たちが怯えていたあの晩に、会社のトップがどういうつもりでグラスを持っていたのかということのはずです。

ずっと「仕事の潤滑油」と書いてきたシャンパンの夜を、いまになって「私的な行動」と呼ばれても、うなずきにくいですよね。