2026年10月19日の午後、Xの「#KAITO問題」に、「海外ではもう、髙橋海人は無責任なマザコン男という見方が広まっているらしい」という投稿が流れてきました。

台湾の友人から聞いた話として書かれたものです。

King & Prince(キンプリ)の髙橋海人がソロで名乗る「KAITO」は、20年前からある歌声ソフト(ボーカロイド、略してボカロ)の男性キャラクターと同じ名前です。

告知に使われた「#KAITO」のハッシュタグは10月15日に変わったものの、本人の謝罪の言葉は、お金を払って入るファンクラブのブログでしか読めません。

日本の外にいるボカロのKAITOのファンは、今回のことをどんな言葉で受け止めているのでしょうか。

そして「マザコン」とまで言われてしまう評判は、どこから出てきたのでしょうか。


「マザコン」の出どころは台湾

「マザコン」という言葉は、もとをたどると台湾の掲示板「Dcard(ディーカード)」の書き込みに行き着きます。

Dcardは台湾の若い人がよく使う掲示板で、「偷偷說」という、名前を伏せて本音を書き込む板があります。

同じ日の午後、その板に書かれた反応が、日本語の訳つきの画像でXに紹介されました。

画像には、「基本的には髙橋海人への批判がほとんどで、擁護している人もいるにはいるけど、かなり少ないみたい」という説明が添えてありました。

 

選んで抜き出した書き込みなので、台湾のファン全体がこの通りとは限りません。

それでも、画像に並んだ書き込みは、「名前はいいけれど、タグは分けてほしい」と言ってきた日本のKAITOファンの声とよく似ています。


髙橋海人のプロフィール

名前 髙橋海人(たかはし かいと)

生年月日 1999年4月3日

出身 神奈川県

所属 King & Prince

ソロの名前 KAITO

 

2026年10月3日に「KAITO」の名前でソロ活動を始めると発表し、10月5日に1曲目の「swim?」を配信しました。

その告知にKing & Princeの公式アカウントなどが「#KAITO」を付けたことで、ボカロのKAITOのファンが長年使ってきたタグに、新曲の告知と感想がまとめて流れこみました。

10月15日には、レーベルのユニバーサル ミュージックが「#KAITO_SALTBOY」を使うよう呼びかけました。

「SALT BOY」は11月25日に出る、KAITO名義で初めてのEP(数曲入りの作品)の名前です。


台湾の掲示板が例えた「膝の上」

Dcardのスレッドの最初の書き込みは、今回のことを公園のベンチに例えていました。

友だちとベンチで楽しく話していたら、知らない人がいきなり膝の上に座ってきて、「僕のほうが人気者なんだから、この場所は僕が座るべきだ」と言った、という話です。

書いた人は、ベンチが自分のものではないことも、同じようなベンチがほかにたくさんあることも認めています。

そのうえで、「もう私が座っているんだから、礼儀正しく、ほかのベンチに座ればよくない?」と書きました。

返信にも「人気があるかどうかに関係なく、他人の膝の上に座らないのは最低限のマナーでしょ」「この例え、笑った」と続いています。

名前は本名だから仕方ない、でもタグだけは分けてほしい。

日本のKAITOファンが10月3日の発表の直後から言ってきたことを、台湾の人は、ベンチのたとえ話にして書いていたんです。

発表の直後、日本のKAITOファンが何に納得できなかったのかは、こちらで詳しく追っています。

KAITOタグ汚染問題…髙橋海人の「リスペクト」に納得できない理由
KAITOタグ汚染問題…髙橋海人の「リスペクト」に納得できない理由2026年10月5日の午前0時すぎ、「#KAITO」のタグには、青いマフラーの絵でも新しいボカロ曲でもない投稿が流れこんでいました。 K...


「媽寶」の母親役はファン

「マザコン」と訳された言葉は、中国語の「媽寶(マーバオ)」です。

その書き込みは短く、「アイドルというより、媽寶に見える」の一言だけでした。

台湾でよく使われる「媽寶」は、母親に何でも決めてもらい、自分では責任を取らない大人の男を指す言葉です。

日本語の「マザコン」より、「守ってもらってばかりで、自分では何もしない人」を責める響きがずっと強いんです。

続く返信には、こう書いた人たちもいます。

 

「ファンに甘やかされて育ったデカい赤ちゃんに見える」。

「いつになったら、アイドルを赤ちゃん扱いするのをやめるんだろう」。

 

台湾の掲示板で「母親」にたとえられていたのは、髙橋海人をずっと守っているファンでした。

髙橋海人本人は公には何も言わないまま、代わりにファンが反論を続けている。

台湾から見ていた人には、本人が黙ってファンに言い返してもらっている姿が、「媽寶」そのものに見えたんです。


有料ブログの謝罪が届かない海外

髙橋海人は10月15日、有料の会員制サイト「FAMILY CLUB web」にある自分のブログで、今回のことに触れました。

ファンに向けて「本当にごめんなさい」と書いたと報じられています。

ただ、そのブログは会費を払った会員しか読めません。

海外のKAITOファンから見れば、謝罪はまだ1度も出ていないのと同じでした。

 

台湾の掲示板には、髙橋海人の謝り方を責める言葉が並んでいました。

「謝罪っていう最低限の礼儀すら守れないのに、何がアイドルだよ」。

「だんまりを決め込んで、ファンを盾にして、数週間後にこっそり謝罪」「あなたの推しは27歳であって、7歳じゃないんだよ」。

「ここまで広報がひどいアイドル、初めて見た」。

台湾の大きな掲示板「PTT」のアニメ・ゲームの板にも、10月16日に「有料でしか読めない場所に置くのは謝罪に見えない」という書き込みがあります。

新しいタグの「SALT」が「塩」なのにかけて、Dcardには「新しいタグって、塩対応(そっけない対応)するつもりってこと?(笑)」という書き込みまでありました。

 

YouTubeの「swim?」のミュージックビデオの低評価は、低評価の数を推計するブラウザの拡張機能で見ると約70万にのぼっています(10月20日時点・高評価は約10.7万)。

Dcardでは、どちらの味方でもないという人が「swim?」を聴いたうえで、「事情を知らない海外のボカロファンが、自分のおすすめ欄を整えるために低評価を押すのは筋が通っている」と書いていました。

低評価がどこから来たのかは、こちらにまとめています。

髙橋海人「swim?」低評価82%の正体|ボカロ勢が押した本当の理由
KAITO問題で低評価1位|髙橋海人「swim?」に何が起きたのか2026年10月12日、King & Princeの髙橋海人のソロ曲「swim?」のミュージックビデオに「低評価率82%」という...


韓国と英語圏のボカロファンの声

韓国の大きな掲示板「Ruliweb(ルリウェブ)」では、配信の翌日の10月6日に、「後から来た側が別の名前を使うのが筋では」「知っていながら、注目を集めるためにわざと被せたのは明らか」という書き込みが出ています。

タグが変わった翌日の10月16日には、同じRuliwebに「結局アイドル側が白旗を上げて、ボカロファンの勝ちで終わったそうです」という書き込みも出ました。

 

ところが英語圏の大きな掲示板「Reddit(レディット)」のボカロのコミュニティでは、もう少し落ち着いた声が目立ちます。

King & Princeとボカロの両方が好きだという人は、「推しの1人だけど、KAITOを検索しているときに彼の投稿は見たくない」と書いていました。

「名前で検索しにくくなるのは、本人のキャリアにとっても賢い手とは思えない」という声もあります。

 

もう1つのスレッドには、「1つの単語は独占できない」「ここまで憎しみを向けるほどのことか」と、ボカロ側に落ち着くよう呼びかける書き込みも並んでいました。

英語のボカロ情報サイト「Electric Bloom」も10月8日の記事で、海外のファンの中に「髙橋本人への個人攻撃はやめてほしい」という声があったと伝えています。

「海外ではもう」と言い切れるほど、どこも同じ声というわけではありません。

厳しい声が強く出ているのは、台湾と韓国の掲示板です。

 

それでも、英語圏の落ち着いたファンも、#KAITOで探しにくくなって困っているのは同じです。

KAITOの声のもとになった歌手の風雅なおとも、10月5日に「自分の療養中、KAITOのグッズやイラスト、新しい曲を探すのが癒しだったのに、急に探しにくくなった」という意味のことを投稿しています。

海外のファンはXの「#KAITO」でしか作品を探せないらしい、という声が日本の人からも出ていました。

タグがふさがれて、日本の外のファンはもっと困ったのかもしれません。


海外の人に届けるための名前

そもそも、髙橋海人はなぜ「KAITO」をソロの名前に選んだのでしょうか。

配信前日の10月4日の夕方、髙橋海人はインスタライブでこの名前に触れ、ボカロのKAITOを「レジェンド」と呼んでいました。

生配信を見ていた人の書き込みによると、まったく違う名前も考えたけれど、海外の人にも聴いてもらえるなら自分の名前を背負いたくて、KAITOに決めたと話したそうです。

 

Xでは、この名前を「海外進出のため」と読む人と、「本人は海外進出なんて一言も言っていない」と返すファンが、ずっとぶつかってきました。

そして、海外でこの名前を真っ先に目にしたのは、#KAITOで作品を探していたボカロファンだったはずです。

海外の人に届けたくて選んだ名前なのに、海外のKAITOファンの多くには、歌より先にタグの騒ぎのほうが届いてしまったんです。


ウィキペディアに出た改名の提案

そのころ日本では、ウィキペディアでも「KAITO」の記事名をめぐる話し合いが始まっていました。

日本語版ウィキペディアでは、2026年10月8日、「KAITO」の記事名を「KAITO (バーチャルシンガー)」のように括弧付きへ変える提案が出されました。

「#KAITO問題」のタグでは、この改名の提案を「ウィキペディアの改ざん」だと言うボカロファンが増えていきました。

10月14日には、その話し合いのページに初めて書き込むアカウントが「ボカロの現状に詳しい者です」と名乗って現れます。

その書き込みには、「KAITOはXのタグで髙橋海人のコミュニティが大規模に使っていて、残念ながらボカロは少数派」と書かれていました。

「名前の独占は強要罪や名誉毀損罪にもなりうるという専門的意見も出ている」とまで書いています。

 

ほかの編集者は、「Xのタグの使われ方は確かめにくい資料なので、検証できる資料を」「法的な権利があるかどうかは、記事名を決める基準とは別の問題」と返しました。

ボカロとしての「#KAITO」は2009年までさかのぼれる、という反論も出ています。

10月19日にこの話し合いがXで広まると、話し合いを打ち切る票が一気に集まり、「必要性が客観的に示されていない」として、提案を採用せずに話を終える方向でまとまりつつあります。

Xでは「ボカロ側を名乗った書き込みは、髙橋海人のファンの成りすましではないか」と疑う声も出ていますが、誰が書いたのかは分かっていません。


次の曲でタグはどうなるのか

Dcardのスレッドの終わりのほうに、謝罪についての短い書き込みが1つありました。

「正直、公式に謝罪文を1つ出すだけでよかったと思うんだけど」。

「#KAITO_SALTBOY」は1st EPの名前なので、その先のタグをどうするのかを約束できるのは、本人と公式だけです。

海の向こうで付いた「マザコン」というあだ名を外せるのも、ファンクラブの外で言われる「もうしません」の一言だけなのかもしれませんね。