「LINEも既読つかないし電話も受け付けてないし」

表参道の美容外科「AiZクリニック(アイズクリニック)」に手術代を前払いしていた人が、10月の終わりにXへこう書き込み、その投稿を引用する声が広がっています。

クリニックが院長の相澤勝喜さんの死去を公表したのは、2026年9月1日のことでした。

それから2か月がたった今も、前払いした頭金や手術代が戻ってこないという声が続いています。

クリニックの弁護士にも電話がつながらず、現地へ行こうとしたら臨時休業中だった、という報告まであり、待っている側には何が止まっているのかさえ見えません。

いま返金がどこで止まっているのか、待っている人が手元でできることは何なのかを、わかりやすく解説していきたいと思います。


訃報から2か月たっても戻らない頭金

アイズクリニックは、2021年3月に表参道で開業した美容外科です。

鼻の整形を専門にうたい、公式サイトでは年間500件以上の手術を手がけてきたと紹介されています。

その看板を背負ってきたのが、院長の相澤勝喜さんです。

8月の下旬には、院長の訃報がXで少しずつ広がり始めていました。

9月1日、クリニックは公式サイトに「当院をご愛顧いただいているすべての患者様へ」と題したお知らせを出し、院長の死去を正式に伝えたのです。

亡くなったのは43歳だったと、ネットでは伝えられています。

お知らせによると、院長が急に亡くなったことでクリニックを管理する医師がいなくなり、保健所の指導のもとで診療と手術を休んでいるとのこと。

手術の予約をしていた人は、その時点ですべて手術を受けられなくなりました。

 

お金については、同じお知らせにこう書かれています。

「すでにお支払いいただいている手術代金等につきましては返金対応を進めており、今後、対象の患者様へ順次個別にご連絡いたします」

院長が亡くなった日はお知らせに書かれていませんが、正式な公表より前の8月17日には、すでに公式LINEで患者に返金の案内が届いていたという報告もあります。

ところが10月の終わりになると、冒頭の投稿のように、LINEに既読がつかない、弁護士にも連絡がつかない、という声に変わっていきました。

案内を受け取った人にとっては、「返します」と言われたまま連絡が途切れてしまったんです。


「返金します」が「お約束できない」に変わったお知らせ

待たされている人がいちばん引っかかっているのは、「いつ返ってくるのか」が誰からも示されないことですよね。

その手がかりが、じつはクリニックの公式サイトのトップに出ています。

9月1日のお知らせとは別に、「返金をお待ちいただいている患者様には、長らくお時間をいただき」と書き出された「AiZ CLINICの返金対応および施術後の診察について」というお知らせです(日付は入っていません)。

「返金につきましては、運営法人の所定の手続きに沿って対応する必要があり、現時点では、個別の返金可否や具体的な時期をお約束できない状況です」

運営法人というのは、クリニックを経営している法人のことです。

9月のお知らせでは「返金対応を進めており」だったのが、ここでは時期どころか、返金できるかどうかそのものまで約束できないと書かれていますね。

9月23日の時点では「ご返金はさせていただきます」と答えていたクリニックが、この「長らく」待たせたあとのお知らせでは返金を「運営法人の所定の手続き」に委ねると書いているわけです。

 

とはいえ、クリニックの側にも事情はあったはず。

管理する医師がいなくなった時点で、診療も手術も続けられなくなる。

あとのお知らせでは、これまで手術を受けた人が術後の診察をほかのクリニックで受けられるよう、個別に案内するとも書かれていました。

それでも、「返します」と伝えて待たせていた相手に、窓口も閉じたまま「可否はお約束できない」と知らせるだけでは、さすがに説明が足りないのではと感じてしまいます。


「清算人」が決まるまでに手元でできること

ここで出てくるのが、患者の側に伝えられていた「清算人」という言葉です。

クリニック側の弁護士から「10月中に清算人が決まる見込み」と説明されていた、という報告がいくつか上がっています。

11月に入っても、まだ決まっていないそうです(投稿の「生産人」は清算人のことです)。

 

そもそも清算人が決まると、何が動くのでしょうか?

閉院や法人の解散はまだ発表されていませんが、清算人は一般に、法人が事業をたたむときに残った財産を調べてお金に換え、払うべき相手に払っていく役目の人です。

一般的な流れとしては、消費生活センターなどの案内によると、財産で払いきれない場合は破産の手続きへ移り、破産管財人が財産を現金に換えて、届け出た人たちに公平に分けることになります。

前払いした手術代を返してもらう権利も、その分け方の中で扱われる、ということですね。

お知らせの言葉どおりに読むと、返金はもう、クリニックが自分で決めて振り込むものではなく、運営法人の手続きの順番を待つものになっています。

その手続きを動かす清算人が決まっていないいまは、順番そのものがまだ動き出せていないのかもしれません。

 

ただ、待っている人が手元でできることも、いくつかあります。

  1. クレジットの分割払いやローンの途中なら、カード会社に支払いの停止を申し出る
  2. 払った記録とやり取りを残しておく(領収書・振込の控え・公式LINEの返金案内の画面)
  3. 清算人や破産管財人から通知が来たら、返してほしい金額を届け出る

このうち1つ目の支払いの停止は、割賦販売法という全国共通の決まりにある「支払停止の抗弁」という仕組みです。

大阪府の消費生活の案内では、美容医療は対象の業種に入っていて、支払い期間が2か月を超えるものが対象、業者が倒産してサービスを受けられなくなった場合も含まれる、と説明されていました。

支払い期間が2か月を超える払い方が対象なので、カードの1回払いや振り込みで払い終えた分は、ここには当てはまりません。

自分の払い方で使えるかどうかは、局番なしの188でつながる消費生活センターで確かめられます。

 

院長を悼む声と返金を待つ声

返金の行方が見えないまま、Xでは院長の死因について、死因を勝手に決めつける話や、ご家族を責める書き込みまで出回っているのが現状。

クリニックは9月1日のお知らせの中で、死因は関係機関の確認によって病死だと確かめられていると説明しています。

そのうえで、ご遺族と故人の尊厳を守るために憶測を広めないでほしいと呼びかけ、誹謗中傷は弁護士を通じて記録しているとのこと。

誰のせいかを探す書き込みがどれだけ増えても、返金の行方を決めるのは清算の手続きで、そこは何も変わりません。

 

訃報が流れた8月の終わりには、院長のカウンセリングを受けたことがある人からの声も上がっていました。

4月に30万円の頭金を払っていた患者のように、何か月も前から相澤院長の手術の日を待っていた人たちがいます。

返してほしい気持ちも、院長を悼む気持ちも、どちらも口にしていいはずのものなのに、噂がその両方を言いにくくしていることに胸が痛みます…。

亡くなられた相澤勝喜院長のご冥福をお祈りいたします。