2026年10月20日の朝、Xに「米津さんのライブチケのやり方良いよね」という投稿が流れてきました。

席は会場に入るまで分からないし、チケットぴあを通していないから手数料もかからない、と書かれていました。

11月6日から始まる全国ツアー「米津玄師 2026 TOUR / GHOST」を前に、チケット代の上がり方にうんざりしている音楽好きには、うらやましい話かもしれません。

米津玄師のツアーの話ではありませんが、ライブのチケットは気軽に買える値段ではなくなってきました。

では米津玄師のチケット販売は、どこが優秀だと言われているのでしょうか。

そして、その仕組みと引きかえに、ファンが我慢しなければならないことは何なのでしょうか。


米津玄師のプロフィール

名前 米津玄師(よねづ けんし)

生年月日 1991年3月10日

出身 徳島県

デビュー 2009年に「ハチ」の名前でボーカロイドの曲を発表、2012年に本名で1枚目のアルバム『diorama』

 

2018年の「Lemon」で一気に名前が広まり、その後もアニメや映画の主題歌を数多く手がけています。

2026年も、6月にNHKのサッカー中継のテーマ曲「烏」、7月に映画『キングダム 魂の決戦』の主題歌「夜鷹」を出しています。

今回のツアー「GHOST」は、11月6日の長野ビッグハットから12月17日のK-Arena Yokohamaまで、6都市で14公演。

国内のチケットは、すべて「KENSHIYONEZU TICKET」という公式のチケットサイトで、抽選で売られました。

値段は指定席・注釈付指定席(ステージや演出の一部が見えにくい席)・立見のどれも9,900円。

一般販売の受付は2026年7月26日に締め切られていて、いまから手に入れる道は公式リセールだけです。


会場に入るまで分からない座席

当選した人が受け取るのは、スマホに表示するQRコードのデジタルチケットだけです。

前回、2025年のツアー「JUNK」では、このQRコードに何列目の何番という座席は出ておらず、入口で読み込んで初めて座席券を受け取る形でした。

前回の「JUNK」に行ったことのある人の話では、駅の改札のような機械にQRコードをかざすと、座席の書かれた紙の券が出てくるそうです。

その紙を手にして、やっと自分の席がどこなのかが分かります。

今回の「GHOST」も、受け取るのは同じQRコードのデジタルチケットで、前回と同じ流れになるとみられます。

 

アリーナの前のほうなら高く、スタンドの後ろなら安い、というふうに、転売のチケットの値段はほとんど席の場所で決まります。

どの席になるか誰にも分からないチケットには、転売する人も高い値段を付けようがありません。


1枚990円かかる手数料

公式チケットサイトで売っているので、「ぴあを通していない」のは本当。

売り場として案内されているのは、米津玄師の公式チケットサイトだけです。

ただ、手数料はしっかりかかります。

内訳は次のとおりです。

  • システム利用料 1枚330円
  • 販売サービス料 1枚550円
  • デジタルチケット発券手数料 1枚110円
  • 決済手数料(コンビニ・ペイジー払いのとき) 1件250円

クレジットカードで払っても、9,900円のチケットは1枚10,890円になります。

 

ちなみにチケットぴあも、基本の手数料が1枚495円で、そこに公演ごとの「特別販売利用料」が上乗せされます。

公式サイトだから手数料が安い、というわけではありません。

ライブハウスの話ですが、チケット代のほかに手数料が足されていく重さは、アリーナのライブでも同じです。

手数料は安くなくても、お金の面で米津玄師のやり方を「良い」と感じる人がいるのには、わけがあります。

クレジットカードで払った人なら、払うのは9,900円と990円、それだけです。

しかも、抽選に外れても、転売サイトで2倍、3倍の値段になったチケットを買わされる心配がありません。


転売屋が入り込めない3つの決まり

転売をさせないために、公式のチケットには3つの決まりがあります。

  • 来場する全員の本人確認
  • 申し込みのときに登録した同行者の固定
  • 譲るなら公式リセールだけ

当日は、来場する全員がコピーではない公的な身分証を持っていき、会員登録した名前と生年月日が一致しないと入れません(小学生以下の子どもは、健康保険の資格確認書や母子健康手帳など、名前と年齢が分かるもの)。

一般販売で申し込めるのは1公演2枚までで、2枚で申し込む人は、一緒に行く同行者も無料の会員登録をして、申し込む前に登録しておく必要があります。

その同行者は、原則としてあとから変えられません。

 

行けなくなったときに使えるのは「公式リセール」だけです。

各公演の1か月前の正午から当日の朝8時59分まで受け付けていて、譲りたい人と行きたい人の組み合わせを、毎日抽選で決めます。

出品した人には、成立すればチケット代からリセールの手数料1枚110円を引いた額が戻ります(最初に払った手数料は戻りません)。

値段を上乗せして売る方法は、どこにもありません。

米津玄師のライブに限っては、「チケット譲ります」を見かけたら、まず詐欺を疑うくらいでちょうどいい。

公式も、このチケットはチケット不正転売禁止法の「特定興行入場券」にあたると明記しています。

 

この法律は2019年6月14日に始まったものですが、すべてのチケットに当てはまるわけではありません。

対象になるのは、買う人の名前を確かめたうえで、入れる人か席をあらかじめ決めて売ったチケットだけです。

米津玄師のチケットは、座席を当日まで伏せていても、入れる人を名前で決めているので、この法律の対象になっています。

公式リセール以外で手に入れたチケットだと分かれば入場を断ることがあり、そのときの返金や補償は、売った人にも買った人にもしないと書かれています。

本人確認と同行者の固定と公式リセールに、入るまで分からない座席まで重なるので、転売する人はお金を儲けようがありません。

 

座席を伏せるだけでは足りない理由は、ほかのライブの例を見ると分かります。

2026年3月には、Snow Manなどのコンサートのチケットを転売していた男性を、所属事務所と一緒に転売対策に取り組む東京のイベント会社が、東京地裁に訴えたと報じられました。

男性から転売のチケットを買った人がゲートを通って座席が分かったあと、会場の中でそのチケットを回収し、ステージに近い席だったものを改めて高く売ることもあったとされています。

入場ゲートで読み込むまで座席が分からない仕組みを、逆手に取ったやり方です。

席を伏せても、入る人を確かめなければ、転売する人は会場の中でチケットを売り買いできてしまいます。


後から変えられない同行者

いちばん困るのは、一緒に行くはずの友だちが急に行けなくなったとき。

代わりに別の友だちを連れていくことはできず、同行者の分だけを公式リセールに出すことになります。

相手を選んで譲れないのは、家族や親しい友だちでも同じです。

しかもリセールは抽選なので、出したからといって必ず誰かに渡るとは限りません。

リセールが成立しなかったときは、チケットは自分のもののまま、代金も手数料も戻ってきません。

 

スマホを持っていない親や子どもを連れていきたい人も、ひと手間かかります。

公式のよくある質問では、同行者も別のメールアドレスで会員登録したうえで、当日は一緒に来て、申し込んだ人のスマホに同行者のチケットも表示して入るよう案内しています。

 

当日の入り方にも、細かい決まりがあります。

  • チケットはスマホでログインして表示(スクリーンショットや印刷は原則不可)
  • 表示にはネットの接続が必要(会場でWi-Fiや充電器の貸し出しはなし)
  • 2枚で申し込んでも、通路を挟んだ席や前後の席になることがある
  • 3歳未満は入場不可、小学校に入る前の子どもは、シングルCDに入っていたシリアル番号で申し込む先行抽選で売られたファミリー席だけ

スマホをなくしたり充電が切れたりしてチケットを出せなくても、自分の不注意なら再発行はしないとされています。

当日まで席が分からないので、遠くの席に備えて双眼鏡を持っていくかどうかも、前もっては決められません。


相場どおりの米津玄師のチケット代

ライブのチケットそのものが、ここ数年で高くなっているのは数字にも出ています。

チケットぴあのグループの調査会社・ぴあ総研によると、2025年の音楽や演劇などのライブの、参加1回あたりの平均単価は9,286円で、前の年より4.5%上がっています。

ぴあ総研は、大きなアリーナやドームの公演に人気が集まったことや、VIP席のような高い席が増えたことを理由に挙げています。

 

9,900円の米津玄師のチケットは、安いとは言えない、ちょうどこの平均のあたりの値段です。

手数料を入れた10,890円なら、平均より1,600円ほど高くなります。

値上げそのものより、何にいくら払っているのか分からないことに引っかかる人は、ライブハウスに限りません。

米津玄師のチケットも手数料はかかりますが、払う額は申し込む前から決まっていて、あとから上乗せされることもありません。

外れた人も、高く売られたチケットに手を出さずに、公式リセールの抽選を待つことができます。

米津玄師のやり方なら、当たった人は誰でも同じ額を払い、多くお金を出しても、良い席が買えるわけではありません。

もちろん、同行者を変えられない、リセールが成立しなければお金が戻らない、スマホを持たない家族を連れていくには手間がかかる、という不便さはそのまま残ります。

高いチケット代そのものは変えられなくても、高い値段で売りつけられる人を出さない売り方なら作れる。

米津玄師のチケット販売が『優秀』と言われるのは、その売り方を本当にやってみせたからなのだと思います。