夜職の持ち上げすぎに違和感…ラストコールやキャバ嬢始球式が炎上する本当の理由
2026年9月14日、プロ野球の始球式をキャバ嬢が務めるはずだったイベントが、試合当日の昼になって中止されました。
その翌日には、キャバ嬢のオーディション番組で審査する側に出ていた人気キャバ嬢が、コカインを持っていた疑いで逮捕されています。
さらに22日には、高校の文化祭でキャバクラ風のお店を開いていたという投稿まで広まりました。
夜の仕事の人が、そんなに表に出てきていいの?
若い子の憧れって、本当に?
テレビやネットで、なんだか芸能人みたいにふるまっていない?
そう感じていても、「職業差別だ」と言われそうで、口に出すのはためらう。
今回は、ここ数年で一気に進んだ夜職の持ち上げについて、番組やイベント、海外での受け止められ方まで並べながら、この違和感の正体をわかりやすく解説していきたいと思います。
ヤクルトのキャバ嬢始球式が当日中止に
中止になったのは、明治神宮野球場のヤクルト対広島戦で予定されていた「シャンパン ル・レーヴ・ブリヤン Day」。
始球式を六本木の人気キャバ嬢でインフルエンサーのKIHOが務め、元アイドルやモデル、キャバクラのキャストらでつくるグループ「CHANCE GALS」も試合前に登場する予定でした。
告知が出ると、「子どもに見せられない」「家族連れや子どもが多く訪れる場にふさわしいのか」といった声が相次ぎ、胸元を大きく開けたユニフォームや、マスコットのつば九郎のバルーンのくちばしをつまんでふざける動画にも批判が集まります。
球団の説明は、「諸般の事情により」の一言だけでした。
中止を知ったヤクルトファンのひとりは、こう書いています。
あ…今日の「シャンパン ル・レーヴ・ブリヤン Day」と始球式…中止になってる。
誤解されたくないので改めて言いますが、嫌いだから言ってるわけじゃない。
問題にしているのは、プロ野球という子供から高齢者まで見る大衆興行に、どういうスポンサー企画・出演者・プロモーションを持ち込むのかという「球団側の企画設計」の部分。
それを「キャバ嬢への職業差別」で片付けられると、話が全然違う。
— としみアームストロング (@TSM_808) 2026年9月14日
漫画家の倉田真由美も、よく似た書き出しで思いをつづっていました。
職業差別は嫌いだが、世間にはどうしても適材適所というものがある。「ヤクルトの始球式元キャバ嬢起用イベント→中止」の件、夜職にスポットを当てすぎた結果その影が一層濃くなってしまったように感じる。
— 倉田真由美 (@kuratamagohan) 2026年9月15日
言いたいことはあるのに、先に「差別じゃない」と断っておかないと話せない。
このもどかしさは、2人の書き出しからよく伝わってきます。
高校の文化祭にもキャバクラ企画
文化祭の件も、根っこは同じところ。
スーツとドレスの生徒たちがタワーのような飾りまで組んだ写真が広まり、ネットには「子供が知らなくていい世界だよ」「周りの大人が誰も止めなかった事実の方にドン引いてる」といった声が並んでいます。
こうした出し物はこの高校に限った話でもないようで、子どもの文化祭へ行ったという人が、こんな体験を書いていました。
最近の高校の文化祭はカジノとかメイド喫茶(高確率で接客は男)とかコンカフェ(高確率で(以下略))とかキャバ(高確率で(以下略))とかR規制大丈夫かってのが多いですよ。
年の離れた妹連れて上の子の文化祭行った時に店の前で「キャバクラって何!?」と大声で聞かれて気まずいったら…。— ゆきこ (@hideset) 2026年9月20日
キャバクラのようなお店は、風営法という法律で入口に「18歳未満は入れない」という表示を出す決まりがあり、18歳未満にお客の隣でもてなす役をさせることも禁じられています。
球場も学校も、その線の手前にいる子どもがたくさんいる場所です。
夜職を持ち上げる番組が次々に
そもそも、キャバ嬢がなぜ球場や学校の出し物にまで出てくるようになったのか。
ここ数年、キャバ嬢を主役にした番組がテレビやネットで次々に生まれていて、どれもはっきりと「夜の仕事のイメージを変える」ことを打ち出しています。
代表的な2つを見てみましょう。
ABEMA『CHANCE&CHANGE』
ABEMAでは2024年2月に、全国の人気キャバ嬢が主役のバラエティ番組『CHANCE&CHANGE』が始まりました。
狙いは、発表のときから「夜の世界で働く女性たちの可能性を広げ、彼女たちのイメージを変える」こと。
始球式に出る予定だったCHANCE GALSもABEMAの番組から生まれたグループで、メンバー募集要項を見ると、応募できる年齢は「制限なし(未成年者は保護者の同意が必要です)」となっていました。
キャバ嬢オーディション『LAST CALL』
もっと大きいのが、2026年1月からYouTubeで配信されているキャバ嬢のオーディション番組『LAST CALL』。
実業家の溝口勇児らが手がけ、ローランドがMCを務め、審査する側には人気キャバ嬢たちが並び、優勝した人には美容クリニックによる最大1,000万円分の美容整形のサポートや、希望するお店へ入る権利まで用意されているそうです。
運営会社の発表では、始まって約4か月で関連動画を含めた再生回数が10億回を超え、視聴者の約75%が女性で、18歳から30代前半までの若い世代が中心とのこと。
番組の制作発表会では、ローランドが「水商売が夢のある世界だと世間に再認識してもらえるのではないか」と語っていました。
番組の側から見れば、誤解を解きたいという思いもあるのでしょう。
ただ、画面の向こうで見ているのは若い女性が中心で、そこへ整形と入店をごほうびにした「夢」が毎週届いている形です。
ラストコール審査員ゆいぴすのマンジャロ騒動
その『LAST CALL』で2026年5月に起きたのが、ある注射薬をめぐる騒動でした。
話題になったのはマンジャロという、本来は糖尿病の治療に使われる注射薬です。
報道によると、5月の配信回で、審査する側の人気キャバ嬢ゆいぴすが、オーディションの参加者に「マンジャロ打ちな?」と勧め、自分は1か月で5キロやせたと話したとのこと。
同じ回で溝口勇児が、この薬のオンライン処方サービスへの出資を明かしていたことも重なって、副作用のある処方薬を体験談だけで勧めることに、医師などから批判が集まりました。
ゆいぴすはその後謝罪し、本業のキャバクラ以外の活動をしばらく休むと発表しています。
「若い子の憧れ」という話も、決して大げさではないようです。
2024年にマネーポストWEBが取材した42歳の母親は、小学生の娘が現役や元キャバ嬢のSNSを見せて「○○ちゃんとお揃いのコスメが欲しい」と言ってくると話し、「小学生の目に触れる場所で、煌びやかな世界を見せすぎるのは良くないと思う」と語っていました。
反対に、インフルエンサーのてんちむは、「人によっては夜職の方が稼げるから、やりたい人が増える思想になっても全然おかしくない」と、稼ぎの問題として受け止めています。
どちらの言い分にも、うなずけるところがあるのが悩ましいところ。
それでも、憧れの人に「打ちな?」と言われたら、画面の向こうの若い子はどう受け取るか。
「芸能人気取り」と言われてしまう理由
「芸能人気取り」という言葉が出てくるのも、無理はないのかもしれません。
番組の人気が大きくなるにつれて、キャバ嬢たちの活動は、アリーナでのイベントやYouTubeでのコラボなど、芸能人とほとんど変わらない形になってきました。
そこで起きたことを、順に見ていきます。
脅しで消えたラストコールのランウェイ
6月末には、東京のTOYOTA ARENA TOKYOで『LAST CALL』のイベントが初めて開かれました。
ところが、暴露系アカウントから「ランウェイを歩いたら出演者の暴露をする」という脅しが届き、目玉のランウェイは直前に中止に。
出演予定だった明日花キララは、段取りの不誠実さを訴えて出演せずに帰ったと報じられています。
「メジャーリーガーより難しい」発言
『LAST CALL』で審査する側に出ていた人気キャバ嬢のヤマトリノは、大物YouTuberとのコラボも相次いでいたそうです。
週刊女性PRIMEによると、以前にはYouTubeで「有名キャバ嬢になるのは、メジャーリーガーになるより難しい」という趣旨の話をしていたとのこと。
メジャーリーガーと並べられたら、さすがに首をかしげたくなりますよね。
審査員ヤマトリノの逮捕
そのヤマトリノが9月15日、交際相手の男性と一緒に自宅マンションでコカイン0.4グラムを持っていた疑いで警視庁に逮捕され、本人は容疑を認め、交際相手は否認していると報じられています。
ネットでは、ヤクルトの件と結びつけたこんな声も広がりました。
ヤクルトさん例の始球式止めといてギリ耐えたね
《ラストコール出演超有名キャバ嬢・ヤマトリノ(27)逮捕》
「店の出入り口に監視カメラ」月売2億3000万円のカリスマを追い詰めた本気捜査網とは— タマスポTIGERSフォトファン (@tamae_sport) 2026年9月16日
編集者の箕輪厚介も自分のYouTubeで、「キャバ嬢が誕生日に2億円とか稼ぐ時点でおかしいんだって」と話しています。
ただ、疑いはあくまで逮捕された2人にかけられたもので、キャバクラで働く人が薬物に近い、という話ではまったくありません。
それでも、表に出ている人に何かあると、報道の見出しには名前より先に仕事の名前が並び、お店で黙々と働いている人たちまで同じ目で見られてしまう。
キャバ嬢やセクシー女優の海外入国拒否
日本で「夢」と言われている仕事が、国の外ではまったく違う目で見られることもあります。
ここ1年ほど、空港で足止めされる日本人女性の話が続けて報じられていて、その中には夜の仕事とは関係のない人も含まれているんです。
何が起きているのか、3つに分けて見ていきましょう。
福田ゆあのニュージーランド強制送還
2026年6月、セクシー女優の福田ゆあが、ニュージーランドの空港で6時間以上の尋問と薬物検査を受けたうえ入国を拒否され、日本へ送り返されたとXで明かしました。
ホテルも航空券も予約していたのに、観光地での予定を細かく決めていなかったことなどから、「観光とは認められない」と判断されたそうです。
7月のNHK『国際報道2026』は、オーストラリアで就労資格のないビザで入国を拒否された外国人の約半数が日本人女性だったと伝えています。
「キャバクラ勤務=売春婦」という見方
J-CASTニュースの取材に、弁護士の上野潤は「日本では、水商売と性風俗の仕事とが区別されていますが、アメリカでは『売春か、そうでないか』という見方」と答えていました。
別の取材では、「キャバクラ勤務=売春婦」と考える審査官もいると話しています。
アメリカの入国審査では、スマホの写真やSNS、メッセージまで確認されることがあるそうで、SNSで華やかな夜の姿を発信していれば、それもそのまま審査の材料になりかねない、ということ。
ふつうの会社員や学生も足止め
しかも、疑いの目を向けられているのは夜の仕事の人だけではありません。
弁護士JPニュースによると、売春を疑われて入国を拒否されたという相談は、以前は年に4〜5件ほどだったのが、多い月には8件まで増え、その中にはふつうの会社員や学生も含まれているそうです。
娘が友だちとハワイに行くと言い出したら、少し身構えてしまう話ですよね。
佐山愛も言う「日陰の存在であるべき」
ネットには、「日陰で暮らすべき職業が何でキラキラ憧れみたいになってんだよ」という、かなり強い言い方の声まで。
お店の中で働く人の中にも、表に出しすぎることに首をかしげる人がいます。
キャバクラで働きながら発信を続けている佐山愛は、始球式が中止になる前の日の9月13日、Xにこう書いていました。
「私は前々から、AV含めこういう世界は日陰の存在であるべきだと思ってるし、それをやたらキラキラした業界のように見せたり、憧れの職業みたいなポジションにするのは絶対違うと思ってるタイプ。」
そのうえで、仕事そのものは好きで、「要らない」「社会悪だ」とは言いたくない、ともつづっています。
反対に、嫌な感じが本人の過去そのものへ向かってしまった例も。
2025年7月、元セクシー女優の三上悠亜が、ボートレースのイベントで用意された衣装のウエディングドレスを着たところ、同じドレスを結婚式の後撮りで借りる予定だった人から「最悪」と書かれ、大きな騒ぎになりました。
三上悠亜は「イベント用に用意していただいた衣装を着たので、それがウェディングのものとは知りませんでした」と説明しています。
この件は、本人が夜の世界を憧れとして売り込んだ話ではありません。
だからこそ、「職業差別では」という声が大きく上がった騒動でした。
夜の仕事の人が表に出てくると、なんだか嫌だ。
その気持ちが引っかかっているのは、お店で働く一人ひとりというより、日陰にあった仕事を「イメージを変える」「夢」と言って、番組や球場へ次々と運び出していく流れのほうです。
海の向こうではまだ厳しい目で見られている仕事を、子どもも見ている画面で「夢」と呼ぶことに、ひと言いいたくなるのは自然なことかもしれませんね。
