ソウルのコンビニでカードを差し込んだら、決済が通らない。

後ろには列ができていて、財布の中にはVISAのカードが1枚きり。

そんな場面を思い浮かべて、ひやりとした人も多いはずです。

2026年11月4日の夜から、Xでは「韓国でVISAが全滅した」という旅行者の声が一気に広がりました。

11月はK-POPのソウル公演が続く時期で、これから渡韓する人には気が気でない話です。

ところが、VISAや日本のカード会社から「韓国で使えなくなった」という発表は、11月5日の時点で1つも出ていません。

では、弾かれた人のカードはどこで止められていたのか。

VISAしか持っていない人は、出発前に何をしておけばいいのか。


弾かれた店と、通った店

「全滅」と聞くと、手元のカードが急に頼りなく見えてきますよね。

ただ、同じ日のXを追っていくと、まったく逆の声も並んでいます。

最初に「全滅」と書いた人も、あとから「韓国でVISAカードがまったく使えてないわけではありません。(でも他カードに比べてエラーは出やすいです)」と補足していました。

その人が使えたと挙げているのは、韓国のチケットサイトのNOL(ノルチケ)、イベントの物販、ソウルの大型商業施設IFCモールの中の飲食店。

反対に通りにくかったのは、HYBEのポップアップストアと、Weverse Shopの海外決済だったそうです。

 

こうして並べると、弾かれ方は1種類ではありません。

カードを出す日本の側で止まる場合と、受け取る韓国の店やサイトの側で止まる場合の、少なくとも2つがあります。

どちらで止まったかによって、打てる手がまるで違ってくるんです。

 

6割増えていた日本のVISA決済

では、VISAの会社そのものに何か起きたのでしょうか。

VISAの韓国法人が2026年8月21日に出した発表を見ると、話はむしろ逆でした。

2026年のゴールデンウィーク(4月30日〜5月6日)に、日本で発行されたVISAカードが韓国で使われた金額は、直近52週の週平均よりおよそ6割も多かったとのこと。

とくに伸びたのは小さな店でおよそ8割増、地域では釜山・済州・江原がおよそ145%増と、ソウルの外にも広がっています。

VISAの側から見れば、日本の旅行者は韓国でどんどん増えているお客さんなんですよね。

ただ、使う場所が小さな店や地方へ広がるほど、海外のカードに慣れていない店に当たることも増えていきます。


電話が要るのは日本のカード会社の見張り

弾かれた話の中でいちばん怖いのは、最初に「全滅」と書いた人の「都度電話対応になるので海外だと詰みます」という一言ではないでしょうか。

この電話の相手は、韓国の店でもVISAでもなく、カードを発行した日本のカード会社です。

カード会社は、盗まれたカードの悪用を防ぐために、ふだんと違う使われ方がないかを見張っています。

エポスカードのよくある質問にあるのも、「海外でのご利用は、普段と異なる利用状況として判定される場合があり、不正利用防止のためカードのご利用を一時的に停止することがあります。」という一文。

楽天カードも、「店頭でのカードご利用時にも利用制限がかかる場合がございます。」と案内しています。

だから同じVISAでも、止まったのはVISAではなく、自分のカード会社の見張り役だったということが起こるんです。

 

たとえば三井住友カードの場合は、止まるとメールやSMS、アプリ、LINEで確認の連絡が届き、自分の利用だと答えれば、長くても20分ほどで制限が外れる仕組み。

やっかいなのは、旅先でその連絡を受け取れないとき。

楽天カードは、海外のSIMカードに差し替えていると、本人確認のSMSが届かないと注意を呼びかけています。

アプリの通知やメールで受け取れれば旅先でも答えられますが、SMSしか受け取れないままだと、旅先で解除する手段は国際電話くらいしか残りません。

カード会社の案内画面にも、「海外渡航前のお手続きはお済みですか?」という呼びかけが大きく出ていました。

出発前に渡航先や日程をカード会社へ届け出ておく、この「事前申請」が面倒だという気持ちも、正直わかるんですよね。

しかも楽天カードも三井住友カードも、事前に知らせても検知にかかることはあると書いています。

連絡しておくだけでなく、止まったときに旅先で解除できる準備までしておく、というのが本当のところなんです。


海外カードを通さない韓国の店とサイト

とはいえ、カード会社に連絡しておいても弾かれる店はあります。

こちらは、受け取る側の事情です。

韓国の英字紙コリア・タイムズは2025年4月に、手数料の高さや入金までの遅さを嫌って、海外のカードを受け付けないようにしている店があると報じていました。

はじめから韓国のカード専用の決済代行会社と契約している事業者もあるそうです。

2026年10月に韓国の国会が政府機関の仕事を点検する国政監査でも、海外で発行されたクレジットカードの決済が承認されない問題が取り上げられたと、韓国の経済メディアが伝えていました。

 

店ごとの差もあります。

最初に「全滅」と書いた人の説明では、コンビニのようなチェーン店でも、フランチャイズはオーナーごとに契約しているので、使えない店舗が混じるそうです。

使える店が大半でも、例外の1軒はどこかにある。

 

ネットのお店は、もう少し複雑です。

Weverseの公式ヘルプには、海外で発行されたVISA・Mastercard・銀聯・JCBが使えると書かれています。

それでも同じ人は、ふだんから支払いの取り消し(チャージバック)が多い店やサイトほど、弾かれやすくなっていると説明していました。

公式には使えるのに、実際には通りにくいことがある。

ネットで買い物をする予定がある人ほど、VISAとは別の支払い手段が要るということです。


VISAしか持っていない人の出発前リスト

止まる場所が2つあるなら、備えも2つに分けて考えると楽になります。

自分のカード会社で止まる分は、出発前の連絡と設定でかなり減らせる。

店やサイトの側で止まる分は、VISAとは別の支払い手段を持っていくことでしか避けられません。

カード会社への連絡はスマホで数分ですが、新しいカードは届くまでに日数がかかることが多いので、出発が近い人ほど先に手をつけておくと安心です。

カード会社への連絡

まずは、持っていくカードのアプリか会員サイトで、次の4つを確かめておきましょう。

  • 渡航先と日程を事前に伝える(三井住友カードは会員サイトから「海外渡航前の事前セキュリティ緩和申請」ができる)
  • 海外での利用を止める設定を外す(エポスカードの「海外利用停止サービス」のように、出発前に解除が要るものがある)
  • 確認の連絡はSMSだけに頼らず、アプリの通知を受け取れるようにしておく
  • カード裏面やアプリにある、海外からつながる問い合わせ先の番号を控えておく

なかでも見落としやすいのが、2つ目の海外利用停止の設定です。

以前に自分でオンにしたまま忘れていると、どれだけ連絡しておいても海外では1回も通りません。

 

2枚目は別ブランド

VISAのほかにもう1枚持っていくなら、別のカード会社の、MastercardやJCBのような別ブランドのカードにしておくと分散になります。

1枚目がカード会社に止められても、その場で2枚目に切り替えられるからです。

ただし、海外のカードそのものを受けない店では、ブランドを替えても結果は同じでした。

2枚目は、1枚目が止まったときの控えくらいに考えておくのがよさそう。

新しく作る時間がない人は、次のWOWPASSが代わりになります。

 

WOWPASSと少しの現金

店の側の壁を越えやすいのが、韓国のプリペイドカードのWOWPASSです。

前もってお金を入れておくカードで、公式サイトでも「海外カードでは決済できないところでもWOWPASSなら決済成功!」とうたっているほど。

韓国に着いてから、駅などに置かれた専用の機械でカードを発行して、日本円の現金をそのまま入れられるので、出発の直前でも間に合います。

あとは屋台や小さな店のために、少しのウォンの現金があれば、たいていの場面は乗り切れそうです。

 

「VISAが全滅」という言葉だけを見ると、VISAしか持っていない人は行く前から負けたような気分になってしまいます。

けれど、止まる場所が分かっていれば、出発前に打てる手もはっきりしてくるはず。

VISAしか持っていなくても、出発前のひと手間で、会場で詰む心配はかなり減らせるということですね。