猪俣周杜の契約解除|『7人に責任はない』にモヤモヤする理由
2026年10月1日の朝、オーディション番組「timelesz project」(タイプロ)でtimeleszの新メンバーに選ばれた猪俣周杜(いのまた・しゅうと)について、所属事務所のSTARTO ENTERTAINMENTが専属契約を解除したと発表しました。
知人女性の顔を殴ってけがをさせた疑いで逮捕されてから12日後、釈放からはおよそ1週間後のことです。
8人だったtimeleszは、7人で活動を続けることに。
契約解除は当然の処分だと思いながら、正直なところ私は、公式の発表文にあった「メンバーに処分の責任を負わせるものではありません」という一文には、なぜ今それを言うのかとモヤっとしました。
>>猪俣に弊社との専属契約上の重大な違反が認められ
まだ捜査途中でこう結論付けられるのなら逮捕された時点で分かってたよね?何この無駄な1週間
あと7人に責任はないんです😭
を事務所公式が出すのキモイんですけど
タイプロの責任は取るって誰かさん言ってませんでしたっけ? https://t.co/cYZi9kHRFX pic.twitter.com/WObIKkJejA— 紅茶 (@as202as20lcer) 2026年10月1日
残された7人が今回の事件に一切関わっていないことなんて、ファンなら最初から分かりきっているのに。
なぜ事務所は、公式の発表でわざわざその言葉を書き添えたのか。
「我々で」から7人を外した一文
発表文には、こうあります。
「今回の契約解除は、会社としての経営判断となり、その最終判断は他のメンバー7名に委ねたものではなく、かつメンバーに処分の責任を負わせるものではありません」
timeleszのメンバーの菊池風磨は9月27日、自分のラジオ番組『菊池風磨 hoursz』(TOKYO FM)の冒頭でこう話していました。
「我々でしかるべく決断して、決まり次第、すぐにでもお伝えできるよう努めます」
「我々で」と本人の口から聞けば、メンバーも一緒に決めるのだと思うものですが、その4日後、10月1日に出た発表文は、その重い最終判断を7人の手から外していました。
7人に事件の責任がないのは誰の目にも当たり前で、それを公式の文書でわざわざ書くと、かえって事務所が自分の責任から目をそらしているように見えてしまいます。
ただ、こうした発表文には、悲しむファンのほかにも読み手がいるものです。
逮捕のあと、猪俣が出ていたCMや広告はスポンサー6社が相次いで取り下げていて、その中には7人も一緒に出ていたAOKIやABCマートのCMもありました。
残された7人がこれから先、CMやテレビ番組に戻れるかどうかを決めるのは、タレントを起用する側のスポンサー企業やテレビ局。
発表文には、「メンバーは、今回問題となっている行為を事前に把握しておらず、関与もしておりません」という一文もありました。
7人を起用するスポンサー企業がいちばん気にするであろう、事件への関わりの有無に、先回りして答える文面にも読めるんです。
一般の会社にたとえるなら、同僚が重大な問題を起こしたとき、大切な取引先に「担当チームは関わっていません」と一筆入れるようなもの。
宛先は書かれていないものの、ファンをモヤっとさせた7人についての書き方が、取引先には〈7人は起用して大丈夫〉という説明として働くことも考えられます。
迎え入れたことへの言葉はない
猪俣は、それまで3人だったtimeleszに2025年2月、新メンバー5人のひとりとして加わっていて、その5人をグループへ迎え入れたのは事務所です。
発表文の終わりには、「ファンや関係者に支えられて成り立つ仕事だ」という芸能の仕事の基本の考え方を、所属タレント全員にあらためて徹底していくとありました。
それでも、一大オーディション番組を経て猪俣を迎え入れたこと自体には、事務所自身の言葉がありません。
逮捕から発表までの12日間
- 9月18日の夜 江東区のコンビニの駐車場で、知人女性の顔を殴ったとされる
- 9月19日 逮捕。同じ日の夜に謹慎と活動休止を発表
- 9月25日 処分保留(起訴するかどうかを決めないまま身柄を解くこと)で釈放。示談が成立したとみられると報道
- 9月27日 菊池風磨がラジオで「しかるべく決断」
- 9月29日 取締役会で契約解除を決定(9月30日付で解除)
- 10月1日 契約解除を発表
9月19日の最初のお知らせでは、正式な処分は「当局の処分が確定し次第」決めるとしていたのに、実際には刑事上の処分を待たずに、契約の問題として先に決めています。
弁護士ドットコムニュース(9月29日)の解説でも、刑事処分が出ていなくても、信頼関係が損なわれたことを理由に事務所は処分できるとされていました。
刑事処分を待たずに決められるのなら、逮捕の時点でスパッと決めることもできたはず。
発表文には、その間に猪俣本人への聞き取りや事実関係の確認をしたとありますが、なぜこれほど日数がかかったのかまでは書かれていません。
猪俣の謹慎が続くなか、応援してきたファンは不安を抱えたまま、ただ答えを待つしかなかったと思います。
1年前、同じ事務所のAぇ! groupの草間リチャード敬太は、2025年10月4日に公然わいせつの疑いで逮捕されました。
略式命令(裁判を開かずに書面で罰金を決める手続き)で罰金10万円となった2025年11月20日にグループからの脱退が発表されましたが、事務所との契約は続き、2026年7月にはソロで活動を再開しています。
前回と違って今回は、グループからの脱退だけでなく、事務所との専属契約そのものまで終わったわけです。
違いのひとつは、今回は顔にけがをした女性がいること。
ただ、発表文の理由は「専属契約上の重大な違反」だけで、どこで線を引いたのかまでは書かれていません。
この先また所属タレントの誰かが逮捕され、事務所が同じように「当局の処分を待つ」と言えば、今回の前例と厳しく比べられることになりそうです。
契約解除と解雇の違い
今回の発表を見て、クビ(解雇)と何が違うのかと首をかしげた人もいると思います。
解雇は、会社が雇っている社員を辞めさせることで、法律でよほどの理由がなければ無効と厳しく決められているもの。
弁護士ドットコムニュースの解説(9月29日)によれば、タレントと事務所の契約は、仕事を任せる業務委託とされることが多く、労働法の解雇の決まりがそのまま当てはまるとは限らないそうです。
会社員がクビになるのが解雇なら、契約解除は、会社が外部の取引先との契約を打ち切るのに近いイメージ。
発表文にも「契約に定める解除事由に該当すると判断」とあり、契約書で決めておいた終わらせ方に当てはめて、契約を解いたという形です。
似た言葉を並べると、こうなります。
- 解雇=会社が雇っている社員を辞めさせること(法律で厳しく制限)
- 契約解除=結んでいた契約を、契約書の決まりに沿って終わらせること
- 脱退=グループから抜けること(事務所との契約は残る場合もある)
猪俣の場合は、グループからの脱退と事務所との契約解除が同時に起きました。
9月30日付でSTARTOの所属タレントではなくなったので、事務所を通したCMや番組、コンサートの仕事は、ここで途切れます。
脱退だけで契約が残った1年前の例のように、事務所に残ったまま時間をおいて戻る道は、今回はありません。
一方で、刑事の手続きはこれとは別に続いていて、発表文も「刑事上の処分は確定しておりません」と書いています。
同じ解説では、示談が成立しているなら、数週間で不起訴などの結論が出ることも十分考えられるとされていました。
出演していたCMの違約金などのお金の話がどうなるのかは、どの会社も公表していません。
頭を下げるのは何もしていない7人
契約解除を受け止めたうえで、前を向こうとする声もあります。
辛い方は沢山いると思いますし私もタイプロを視聴して新しい彼らのスタートを祝ってました。ですが今回の事件はアイドル事務所としてはけして看過できる内容ではなかったので致し方ない処分だと納得しています。彼らの今後の活躍でこの決断を正解にするしかないと思います。https://t.co/BkEWJnA0dr
— かこるか (@kakorukatkv) 2026年10月1日
ただ、これから事件と関係のない歌番組や制作発表の場で報道陣の前に立つことになれば、矢面に立って頭を下げるのは残された7人です。
年末のカウコン(事務所のグループが勢ぞろいするカウントダウンコンサート)の配信や会場で心ない言葉が飛ぶくらいなら、今年は無理に出なくていい。
ファンがそう思ってしまうのも、7人を大事に思う気持ちから。
7人を守りたいのは事務所もファンも同じだからこそ、あの一文には、迎え入れた側のひと言も添えてほしかったですね。












