WEST.の脱退発表から2日が経って、ファンの側から強く出てきたのは「潔く解散してほしい」という声でした。

7人のまま解散してほしかった、と過去形で書いている人もいます。

その声の隣には、必ずと言っていいほど関ジャニ∞の名前が並んでいます。

2人が抜けても5人で続いたグループとして引き合いに出され、「WEST.とはレベルが違う」とまで書かれています。

ただ、当時の関ジャニ∞に何が起きていたのかを日付で並べてみると、少し違う景色が出てきました。

2つのグループを分けていたのは、メンバーの力の差ではありません。

ファンが「その日」を持っていたかどうかでした。

7人のまま終わってほしかった、という気持ちには、ちゃんと理由があります。

潔く解散してという声が並んだ

2026年8月30日の夜に藤井流星と小瀧望の脱退が発表されてから、ファンの投稿に「解散」という言葉が並びはじめました。

グループを叩きたくて書いている人たちではありません。

むしろ、長く追いかけてきた人ほど、その言葉を使っています。

7という数字にこだわりがあるなら解散一択、という一行です。

2014年のCDデビューから2026年の春まで、このグループは7人のまま12年を走ってきました。

途中で欠けた人も、あとから入った人もいません。

7人という数字は、ファンにとって人数ではなく、グループの名前と同じ重さを持っていたということです。

脱退が発表されるまでに何があったのかは、結婚ラッシュのせいにできない理由のほうに時系列でまとまっています。

 

一方で、5人での続行を望む声も同じくらい出ています。

「解散だけは絶対に嫌だ」「5人でも続けてほしい」という投稿も、同じ時間帯にずっと流れていました。

7人でないなら解散という考えが自分にも過ったけれど、一日考えて、やっぱり5人のステージが見たいと思い直した、と書いている人もいます。

ファンの中で意見が真っ二つに割れているように見えます。

ただ、両方をしばらく読んでいると、2つの声が同じところを指しているのが分かってきます。

どちらも、終わり方の話をしているんです。

一度で終わらせてほしかった

解散を望む投稿の中に、繰り返し出てくる言い方があります。

一度で終わらせてほしい、です。

この人が数えているのは、グループの人数ではありません。

これから何回、つらい日が来るのかという回数のほうです。

脱退の発表があって、継続か解散かの発表があって、脱退の時期の発表があって、実際に2人が抜ける日が来る。

そのあとに、5人での再出発の日がまた来ます。

 

同じ日、宝箱という言い方をしていた人もいました。

初めから解散を選べていたら、誰のことも嫌いにならずに、WEST.を宝箱にしまうことができた気がする、と書いています。

解散してほしいという言葉は、グループを終わらせたいという意味ではありませんでした。

終わりを、何度にも分けないでほしいという意味です。

 

この気持ちを、わがままだと言う人もいます。

ファンが自分の思いをメンバーに押しつけている、という書き方も見かけました。

ただ、終わり方を望むことと、終われと迫ることは、まったく別のものです。

前者は、自分の側の痛みの話をしているだけなんです。

 

しかも、この人たちが望んでいる終わり方には、必ず7人が入っています。

2人を追い出して5人を残せ、と書いている投稿はほとんど見当たりません。

解散してほしいと書く人ほど、最後まで7人の側に立っています。

だからこの声を、グループへの見放しとして数えてしまうと、たぶん読み違えます。

関ジャニは1年4か月あけていた

ここで名前が出てくるのが、ファンから「エイト」と呼ばれてきた関ジャニ∞です。

2024年2月4日にSUPER EIGHTへ改名していますが、今回引き合いに出されているのは改名前の話なので、ここでは関ジャニ∞と書きます。

 

関ジャニ∞は2002年12月18日に8人で結成されました。

2006年12月30日に内博貴が脱退して7人になり、2018年12月31日に渋谷すばるが、2019年9月30日に錦戸亮が抜けて、いまの5人になっています。

2人が抜けたと言われていますが、そのあいだは1年4か月ほどあいていました。

同じ日に2人が抜けたわけではないんです。

 

さらにその前、2006年に内博貴が抜けたときも1人でした。

8人が7人になり、7人が6人になり、6人が5人になる。

関ジャニ∞のファンは、この段差を3回にわけて降りています。

1回ごとに、残ったメンバーが埋め方を探す時間がありました。

渋谷すばるが抜けたあとは錦戸亮と安田章大が中心にボーカルを引き受け、錦戸亮が抜けたあとは安田章大がメインボーカルになっています。

そのつど、誰の分を誰が持つのかを作り直せました。

 

WEST.のほうは、2026年8月30日の発表で藤井流星と小瀧望の2人が同時でした。

7人のうち2人が、同じ1本の発表で抜けます。

関ジャニ∞のファンは、8人が5人になるまでを13年かけて受け取りました。

WEST.のファンは、それを1晩で受け取ったことになります。

渋谷すばるの最後は7月8日だった

いま、関ジャニ∞の当時を思い出しているファンの投稿がたくさん流れています。

それぞれライブをしてくれたのが唯一の救いだった、という一行です。

ただ、実際の日付は少し違っていました。

 

渋谷すばるの脱退が発表されたのは、2018年4月15日の会見でした。

そして関ジャニ∞としての活動が終わったのが、2018年7月8日です。

発表から最後の日まで、2か月半ありました。

その日は『関ジャム 完全燃SHOW』の初の生放送で、7人そろって出る最後のテレビでもありました。

 

ここで大事なのは、生放送だったかどうかではありません。

ファンが、その日が最後だと知ったうえで、その日を迎えられたということです。

4月に知らされて、7月8日に見送った。

2か月半のあいだに、覚悟を作る時間がありました。

錦戸亮の最後は終わってから知った

ところが、もうひとりのほうは事情が違いました。

錦戸亮の脱退と退所が発表されたのは、2019年9月5日です。

そのとき同時に伝えられたのが、9月3日のドームツアー『十五祭(じゅうごさい)』の千秋楽で、すでに関ジャニ∞としての活動を終えていた、という事実でした。

会場にいたファンは、9月3日が最後だったと2日後に知ったことになります。

 

つまり関ジャニ∞でも、きれいに見送れたのは片方だけです。

もう片方は、終わってから最後だったと聞かされました。

それでも当時のファンが「まだ救いがあった」と振り返るのは、どちらにも最後の日そのものはあったからです。

2018年7月8日と、2019年9月3日。

日付が決まっているというだけで、人は気持ちの置きどころを作れます。

 

決まっていないあいだは、その置きどころがありません。

その日が来るまで、テレビをつけるたびに「これが最後かもしれない」と思ってしまいます。

雑誌の表紙も、番組の収録も、SNSの更新も、全部そう見えてきます。

終わりの日が示されていない状態というのは、毎日が少しずつ最後の日になるということなんです。

解散してほしいという声の下にあるのは、たぶんこの疲れ方です。

 

関ジャニ∞とWEST.の違いを、実力の差だと書いている人は多いです。

ただ、こうして並べてみると、差がついていたのはそこではありませんでした。

ファンの手元に日付が渡っていたかどうか、です。

5人が最初に立った1000人の会場

「関ジャニとはレベルが違う」という言い方には、もうひとつの意味が入っています。

エイトは残った5人でも十分やれる力があった、という見方です。

ただ、5人になったエイトが最初にやったことを知ると、その見方も少し変わります。

 

錦戸亮が抜けたあと、5人になった関ジャニ∞が最初に組んだのは、2019年11月6日から始まる47都道府県ツアーでした。

約12年ぶり2度目の47都道府県まわりです。

そして会場の収容人数は、ツアー全体を通しておよそ1000人前後まで落とされていました。

いちばん小さい会場は、高知の須崎市民文化会館で964人です。

メンバーが忙しくて1日に2県を回る日が11日あったので、日程としても楽なものではありませんでした。

 

その前年まで、彼らはドームを回っていたグループでした。

5人になって最初にやったのは、ドームの続きではなく、1000人の会館から日本中をやり直すことだったんです。

レベルが違うと言われているものの正体は、たぶん個々の力量ではありません。

抜けたあとに、規模を下げてやり直せたかどうかのほうです。

 

しかもその47都道府県は、最後まで回りきれていません。

2020年2月14日の徳島公演までは開催できたものの、新型コロナウイルスの影響で、3月11日の島根公演から4月29日の沖縄公演までが中止になりました。

やり直しの最初のツアーが、途中で止められてしまいました。

5人体制で最初に出したシングル『友よ』が約32.9万枚まで伸びたのは、そのさらに前、2019年11月の話でした。

 

そしてこの作り直しには、時間もかかっています。

今のエイトが一番好きになった、と書いている人が、同じ投稿の中で「今この瞬間は受け入れるのは無理」とも書いています。

好きになり直すまでに、この人は5年以上かかっています。

いま関ジャニ∞の名前を出して「5人でもやれる」と言われても届かないのは、そこが抜け落ちているからだと思います。

7人で立つ最後の1日がほしい

WEST.のほうは、脱退の時期がまだ決まっていません。

2人は所属事務所のSTARTO ENTERTAINMENTには残り、タレントとして活動する予定だと発表されています。

そして10月31日と11月1日に予定されていた野外フェス「KAMIGATA EXPO PARK FES 2026」については、出演が困難としてチケットの返金対応が告知されました。

いま決まっているのは、7人で立つはずだった日が消えたことだけです。

 

関ジャニ∞のファンが持っていたものが、WEST.のファンにはまだ渡されていません。

解散するにせよ5人で再出発するにせよ、と書いてあるところが大事だと思いました。

この人は、どちらでもいいと言っています。

ほしいのは結論ではなく、7人で立つ最後の1日のほうなんです。

 

「完璧」という言葉は、中国の古い歴史書『史記』に出てくる話が由来です。

藺相如(りんしょうじょ)という人が、隣の国へ持っていった宝玉を、傷ひとつつけずにそのまま持ち帰った出来事から来ています。

もとの意味は、欠けていないことではなく、預かったものを欠けさせずに返すことでした。

7人のまま返してほしいという願いには、2000年以上前から名前がついていたわけです。

 

今回いちばん広がった指摘のひとつが、WEST.は7人全員が芸能界で生きる力を均等に持っているから、2人抜けたらグループとして弱くなる、というものでした。

そのとおりだと思います。

ただ、均等だったからこそ、12年間ひとりも欠けなかったとも言えます。

誰かひとりが引っぱるグループではなかったから、7人でいる意味が12年ぶん積み上がってしまった。

それが今、いちばん重たいものになっています。

 

残る5人がそれぞれ何を書いたのかは、背中を押す側はどっちだったのかのほうで並べて読めます。

そこでも「協議中」という言葉だけが残されていました。

 

解散してほしいと書いた人も、5人で続けてほしいと書いた人も、わがままを言っているわけではないと思います。

どちらも、終わり方を自分の手で受け取りたいだけです。

7人のまま終わってほしいという願いは、グループを見放す言葉ではありません。

12年ぶんを、欠けさせずに返してほしいという言葉です。

いま5人が協議しているものの中に、その1日が入っていることを願っています。